花組新トップスター明日海りおが兵庫・宝塚大劇場で22日に開幕する「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」(9月22日まで)に出演する。本拠地お披露目の舞台で、一路真輝ら歴代トップが演じてきた黄泉(よみ)の帝王・トートを演じる。東京宝塚劇場は10月11日~11月16日。

 大の柔軟剤好きで知られ、香りにはこだわりを持っている。華やかで、さわやか-。新世代トップ明日海が好み、放つ香りのイメージだ。

 「トップの香りって、本当はもっと、ラグジュアリーな香りだと思っていましたけど、やっぱり自分というベースは変わらない」

 独自の発想で洗剤の香りとブレンドするが、好みの軸は不変だ。

 「海外の製品で、ホワイトブロッサムの香りビーズがあって、そこにいろんな香りの柔軟剤や洗剤を加えています。香水より、やっぱり柔軟剤です」

 好みの香りも、自身にもブレはない。「男役10年」の宝塚で、10年目に入った12年4月、月組準トップに就き、花組へ移って満を持してのトップ就任。

 「役に対してもがくのも(就任前と)一緒だし、責任感は重大になりましたが、怠けそうになる自分と闘うのも同じです」。目指すトップ像も等身大だ。

 「トップさんは上級生で雲の上の存在と感じる時代が、私にもあったんですけど、私は学年が若いこともあり、一緒に楽しめて、意見も言い合える親しみやすい空気を作りつつ、舞台には、けいこから私が100%集中することで、みんなを引き込んでいくような。花組にはそういう世界ができていると思う」

 前トップ蘭寿とむは上級生になっても、誰よりも熱心にけいこに励み、休憩時には組子を笑わせ、和ませてきた。「(蘭寿を)尊敬し、影響されている部分もあります」。のほほんタイプと言われてきた“静のトップ”は、オンとオフの切り替えで求心力を高める。

 トップとして本拠地の船出が、大作「エリザベート」のトート役。一路真輝の初演から上演8回目。初日に通算800回を迎える。明日海は3回目だ。

 「ナンバーや場面ごとのおけいこの仕方も、分かる部分もあるので、下級生にアドバイスもしています」

 3回目とはいえトートは「死に神」の設定で、難役。宝塚100年で8代目トートへ臨む上で、フェアリー系の明日海は「挑戦」「ギャップ」をあげていた。

 「表情の冷暖、動きの緩急をつけて、不思議さを加えたい。これまでトートは、香りにたとえたら、生きている人間じゃないから無臭だと思っていたけど、違う。不思議だけど、引き込まれるイメージ。歌うときも、毒々しく。たとえばブラックベリーを握りつぶすような感覚を頭に描いて」

 どんなトートの香りになるのか。トップスター明日海りおが匂い立つ。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」(脚本・歌詞=ミヒャエル・クンツェ氏、音楽=シルヴェスター・リーヴァイ氏、オリジナル・プロダクション=ウィーン劇場協会、潤色・演出=小池修一郎氏) 96年、一路真輝のサヨナラ公演で初演。8回目の上演で、通算回数799回。劇団代表作のひとつ。オーストリア皇后エリザベート(蘭乃はな)になった1人の少女がたどった数奇な運命を、高い音楽性を持つ楽曲でつづるミュージカル。宝塚版では、黄泉の帝王・トートを主人公とし、エリザベートと禁断の恋に落ちる。楽曲は「男役の限界を超える」と言われる難しいナンバーが並ぶ。

 ☆明日海(あすみ)りお 6月26日、静岡市生まれ。03年4月「花の宝塚風土記」で初舞台。月組配属。08年、バウ・ワークショップ「ホフマン物語」でバウ初主演。同年「ミー・アンド・マイ・ガール」で新人公演初主演。11年「アリスの恋人」(バウ)主演などで活躍し、12年4月に月組準トップ。13年1月から三井住友VISAカードのイメージキャラクター。同3月、花組へ移り、今年5月に花組トップ就任。中日劇場公演「ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編-」でトップ初作品。身長169センチ。愛称「みりお」。