秋ドラマも終盤戦。本コラムでも何作か紹介したが、今回は特にはまっている「コタツがない家」を紹介したい。物語は、経営者でありやり手ウエディングプランナーの万里江(小池栄子)が、売れない漫画家のダメ夫(吉岡秀隆)と将来に迷走中の息子(作間龍斗)、さらには熟年離婚された父親(小林薫)といったダメ男3人と生活を共にするところから始まる。

毎回どこの家庭でも起こりうる小さな問題が起き、それを解決することで家族がほんの少し進んでいく。タイトルにもあるように、一家だんらんの象徴でもあるコタツがなく、新しい家族のカタチの提案といったところだろうか。

脚本を「コントが始まる」「俺の話は長い」の金子茂樹が務め、劇的な変化はないもののテンポのよい会話劇と芸達者な出演者たちで十分に楽しめる。とびきりおいしいだしのかけそばを食べている気分である。

そこで今回紹介したいのは、父親役を務める小林薫。熟年離婚され詐欺にあい居場所をなくした後にたどり着いた娘の家。元々バリバリと仕事をしていた典型的な昭和の男だが、居候することになり肩身がなんとも狭い。さらには、吉岡演じるダメ夫といつも小競り合いをしている姿が面白い。他の作品で見かける男らしい姿がそこにはなく、回を重ねるうちに不思議とはまり役だと思えてくる。

改めて小林薫。説明不要の大御所俳優で現在72歳。同年代は柴田恭兵や舘ひろし、亡くなったが大杉漣や萩原健一がいる。松方弘樹や原田芳雄ら映画スターは一回り上で、唐沢寿明や中井貴一、柳葉敏郎などトレンディードラマで活躍した世代は一回り下。俳優の活躍の場が映画からドラマに切り替わるタイミング、サッカーに例えるといわゆる谷間の世代といったところだろうか

ドラマや映画の「深夜食堂」でも感じていたが、映画スターのようなわかりやすい存在感ではなく、またトレンディー俳優のキラキラ感でもなく、この世代だからこそ出せるひょうひょうとした雰囲気に今回は駄目さ加減が加わってなんとも魅力的に映る。そして、他のキャストとの息の合う演技はもう何年もシリーズを重ねてきた雰囲気さえ漂う。宣伝にもあったが、ネオ・ホームコメディーとしてこれからぜひシリーズして欲しい作品である。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて南青山でカレー&バーも経営している。直近では映画『その恋、自販機で買えますか?』『映画 政見放送』が公開。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)