5月5日に慢性心不全のため死去したシンセサイザー音楽の先駆けとして世界的に活躍した作曲家でシンセサイザー奏者の冨田勲さん(享年84)のお別れの会が15日、東京・青山葬儀所で営まれ、音楽家や芸能関係者ら約800人が参列した。

 13年夏に幕張メッセで行われた音楽フェス「フリードミューン・ゼロ」に出演した際のライブ時の写真が遺影として置かれ、祭壇は約11種類3560本の花をあしらい、、宇宙好きの冨田氏に合わせて、宇宙から冨田氏がこちらを見ているようなイメージで作成したという。

 映画『学校』シリーズなど多くの作品で共に仕事をした映画監督の山田洋次氏(84)や、冨田氏の親族と親交のあるという嵐の櫻井翔(34)、歌手の由紀さおり(67)安田祥子(74)姉妹ら多くの著名人も参列した。冨田さんを敬愛する米歌手のスティービー・ワンダー(66)からは、VTRでメッセージが送られた。

 弔辞をささげた山田氏は「僕にとって一番頼りになる作曲家でした。もっと一緒に仕事をするつもりだったのですが、悲しいです。同じ世代ですから、先に逝ってしまったっていうのはつらいですね。ミュージシャンというイメージが全くしない人で、科学者みたいな考え方をする理系の人でした。音楽を作るという必要なことだけをやってきた、無駄がない人だった。素晴らしい才能を持っていたと思います」と故人をしのんだ。

 喪主を務めた長男の富田勝さんは、冨田氏が、自宅で倒れる1時間前まで今年11月に上演予定の新作「ドクター・コッペリウス」の打ち合わせをしていたことに触れ「家族には冗談で『11月までは死ねなくなっちゃったよ』といたずらっぽく言っておりました」と明かした。この日の会場では、その打ち合わせ時に冨田氏が「感激してくれればいいねえ、お客さんがね」などと話す肉声が流されていた。

 さらに勝さんは「父は『まだやりたいことは2つある』と言っていました。ひとつは言うまでもなくドクター・コッペリウス。もうひとつは何だったのか。正確には私たちにはわかりません。冨田勲の最後の夢とは、冨田サウンドを次世代に引き継いで、さらに発展し、進化することだったのかもしれません」と話した。

 冨田さんは慶大在学中に日本コロムビアで作曲家としてのキャリアをスタートさせた。63年のNHK大河ドラマの第1作「花の生涯」をはじめ、大河ドラマは「天と地と」「勝海舟」「新平家物語」などの音楽を担当。山田洋次監督の作品や、手塚治虫さんの名作アニメ「ジャングル大帝」「リボンの騎士」の音楽なども手掛けた。70年代から、シンセサイザー(電子楽器)をいち早く導入して楽曲を制作。74年に発表したアルバム「月の光」が日本人として初めて米グラミー賞(4部門)にノミネートされるなど、世界的な評価を得た。以降も発表した作品が世界的にヒットした。

 最近では12年に初音ミクとコラボレーションした「イーハトーヴ交響曲」を発表して話題になった。