野田秀樹(60)作・演出の新作が中村勘三郎さんへのオマージュ(敬意)となることが22日、分かった。NODA・MAP公演「足跡姫(あしあとひめ) 時代錯誤冬幽霊(ときあやまってふゆのゆうれい)」(来年1月18日~3月12日、東京芸術劇場)で、宮沢りえ(43)妻夫木聡(35)古田新太(50)が主演する。

 野田は勘三郎さんに新作歌舞伎「野田版 研辰の討たれ」を書いて以来、何度もタッグを組んだ。12年に亡くなる前、勘三郎さんは野田に「この姿(医療器具でがんじがらめの姿)を舞台にしてよ」と頼んだ。野田は「あの姿を書こうと思わないが、気になっていた」という。葬儀で弔辞を読んだ坂東三津五郎さんの「肉体の芸術ってつらいね。死んだら何も残らないんだもの」という言葉が脳裏に残ったという。昨年、三津五郎さんも亡くなり、「肉体を使う芸術、残ることのない形態の芸術について書いてみたいと思った」と明かす。

 時代は江戸、ストーリー、人物設定は未定だが、野田が「勘三郎へのオマージュ」と明言する舞台に、野田作品7度目の宮沢りえ、5度目の妻夫木聡、9度目の古田新太と、最も信頼する俳優が集結。歌舞伎の中村扇雀、佐藤隆太、鈴木杏、池谷のぶえが出演する。舞台に勘三郎さん、三津五郎さんは出ないが、「彼らのそばにいることができた人間として、その思いを作品にしてみようと思った」。「足跡姫」の足跡には、消えていった者が残したもの、という思いを込める。

 野田は「勘三郎同様、くだらないものが大好きなので、くだらない話の方面も精魂込めて書きたい」。あえてオマージュとすることで、「プレッシャーになるし、勘三郎の名前が、少しでも長く人の心に残っていくため、書かないよりはいい」と話した。