新垣結衣(28)は、観察眼が鋭く、細やかな気遣いのできる女性だった。

 読者投票で受賞者や受賞作品を決める「日刊スポーツ・ドラマグランプリ」で主演女優賞に決まり、先日インタビューした。対象作品は「恋ダンス」がブームにもなった「逃げるは恥だが役に立つ」。放送終了から、もう約4カ月が過ぎていたが、記念のトロフィーを手渡すと、笑顔を見せて喜んだ。

 写真撮影を終えて、別室でインタビューをする流れだったが、待機となった。しばらくすると、先に部屋に入っていた新垣が、ドアを開けてひょっこり顔を出した。「今、片付けているので、お待ち下さい」。まるでスタッフかマネジャーのように丁寧な口調で事情を説明した。実はその部屋はイベント出演していた新垣の楽屋だった。自分で室内を片付けてから、私たちを招き入れてくれたのだ。

 取材は私が担当したが、表彰でもあるので、上司が同席した。おかげで少し緊張してしまい、気分を落ち着かせようと手を使って顔を仰いでいたら、すかさず新垣が「よかったら、お水をどうぞ」と、ペットボトルを差し出してくれた。こちらの緊張をすぐさま感じたのでしょう。取材前に、まずは一息入れましょうよと言っているように思える表情を浮かべていた。おかげで、気分も落ち着いた。

 いくつか質問をしていたら、空気が乾燥していたこともあって、私が小さく咳きをしてしまった。かぜをひいていたわけではないが、のどに多少の違和感を覚えた。申し訳ないなと思ったその瞬間、新垣がこちらを見つめながら「のど飴(あめ)ではないですけど」と前置きした上で、部屋の机に置いてあった飴を手渡してくれた。

 

 1粒ずつ小さな袋に入っている飴で、袋にはメッセージが印刷されていた。新垣がいくつかある中から、選んで渡してくれた飴は2つ。1つは「頑張って」と書かれ、もう1つには「たまには休んで」と記されていた。こちらの体調を想像して、その2つを選んでくれたようだ。

 インタビューを終えると、もう1つ飴を渡された。袋には「お疲れさま」と書いてあった。取材を終え、ほっとした気持ちになっていたところで、絶妙のタイミングだった。どうやら、先ほど飴を選んだ時、最後に渡そうと用意しておいたものらしい。押しつけがましくなく、自然にその場がなごむような気遣いを、心からうれしく感じた。

 相手の様子を見て、何をしたらいいのか、すぐに判断して実行できる。おまけにそれが、ごく自然な振る舞いに見えた。ドラマは多くの視聴者に支持された。女優として輝きも増しているが、1人の大人の女性としても、とても魅力的だと感じた。【杉山理紗】