ギタリストでロック・シンガー・ソングライターの仲井戸麗市が、盟友との11年越しの約束を果たす時がやってきた。10月9日の67歳の誕生日に、東京・日比谷野外音楽堂にCHABO BANDを率いてライブを開催する。

 これが、ただのバースデーライブでないことは、仲井戸ファン、昭和の伝説のロックバンドRCサクセションファン、そのボーカリスト忌野清志郎ファンは、知っている。仲井戸と清志郎さんの約束の地だからだ。

 2人が所属していたRCサクセションが活動を休止して15年。2006年に、2人は再び一緒に演奏をするようになっていた。清志郎さんの新アルバム「夢助」の楽曲を2人でも制作。初夏には、同年8月の日比谷野外音楽堂ライブも発表し、チケットまで発売した。それ以前に、2人でフルライブをしたのは、そこから12年も遡る1994年夏。それも、ここ日比谷野音だった。

 ロックバンド形式のRCサクセションが大暴れしていた80年代も、日比谷野音ライブは、夏の恒例行事だった。すなわち、2人の友情の歴史を刻んだ会場。久々の再会ライブの地に選んだのも、必然だった。

 しかし、直後の06年7月に清志郎さんに思いもしないことが降り掛かる。咽頭がんの発覚。再会ライブは中止され、闘病生活を余儀なくされた。

 1度は光が差した。1年半後の2008年2月10日。清志郎さんは、仲井戸のサポートを受けて「完全復活祭」と呼ぶ日本武道館ライブを実現させた。まずは、2人の14年ぶりの再会フルライブを果たすことができた。

 2人は、そもそもの約束の実現に動く。同年初夏。2年前に中止された日比谷野音ライブを9月に開催することを発表した。今度こそ叶えられると、信じて疑わなかった。

 しかし…。同年7月に清志郎さんのがんが再発。またもや約束は露と消えた。

 清志郎さんの2度の闘病生活の間で、仲井戸は自分のライブで何度も「キヨシと約束があるんだ」と明かしていた。親友として「再び歌えるようになることよりも、まずは元気に」を願い続けていたが、頭の片隅には野音の約束もずっと残っていた。

 それを知るファンたちにとっては、09年5月2日の清志郎さんの他界は、「清志郎とチャボ(仲井戸)の永遠の別れ」、2人の野音の夢が絶たれたことを意味していた。

 8年の時がたった今、仲井戸に野音で再びライブをするチャンスが訪れた。仲井戸の関係者は「あくまでロックの聖地の1つ、日比谷野外音楽堂を誕生日に押さえることができたため」と、開催理由を説明した。

 ただし、ライブのタイトルは「雨あがりの夜空に・2017」。

 37年前の1980年に2人が共作した、RCサクセションの出世作にして最大の代表曲である。