1991年(平3)の設立以降、映画作りにこだわり続ける芸能事務所ディケイドが、所属俳優が集結させ、設立25年を記念し映画を愛する大人の青春映画「AMY SAID エイミー セッド」(村本大志監督)を製作、公開した。出演した三浦誠己(41)と渋川清彦(43)がニッカンスポーツコムの取材に応じ、俳優の立場から映画と業界の今を語った。

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 ディケイドの俳優陣は信頼する監督、納得した作品であれば、作品の規模や役の大小にかかわらず出演する。演技力の高さから、国内外で活躍する監督から信頼され、作品の大事な部分を固める役どころで起用されるケースが多い。その俳優陣が主役となって、スクリーンの中心で存在を輝かせる“オールスター映画”が「AMY-」だ。

 -企画製作の佐伯真吾代表取締役は、俳優にスポットを当てたいと

 三浦 そうですね…でも俳優って自分が何番手だとか、あまり考えていない。

 渋川 この事務所にいる人は(番手は)あまり考えていないと思うけどな。

 三浦 この監督とやりたいということ(が大事)。例えば瀬々敬久監督が撮る、自分たちがやれそうな役がある時に、何番手だとか考えない。監督と一緒に出来ることが、すごく幸せだと思ってやっている。1本ちゃんと完成して試写をやって公開する映画と、放送しながら撮っていくテレビでは、世間の人に提示するやり方、流れの違いもある。

 渋川 そうだよな。テレビの場合、脚本が出来ていなかったりするからね。

 三浦 映画は万国共通のものだと思うんですよ。だから日本国内の人だけに見せることより、見た何人でもいいけど(海外の人の心を)ぶっ飛ばしてやろうというか、俺たちすごいものを作っているんだ、と発信しようというエネルギーは抜群にあると思いますね。

 -ただ、国内でも単館系の劇場が減少し、小規模作品は上映自体ハードルが高い

 三浦 (映画業界は)もっともっと難しくなってくると思います。映像作品の、視聴環境の激変ぶりのスピード(が速い)。携帯で見られるようになって、ネットフリックスなどパソコン(のオンデマンド配信)もあるわ…映画館で映画を見る行為が好きという人しか、映画館に行かなくなっている。あとは芸能が好きな人たちが、アイドルやスターが出ているから見に行くということしかなくて…。僕が小、中学生の時は、年に1回くらい映画を見ましょうと、体育館に暗幕を張って真っ暗くして映画を見ていた。自分の息子を見ていて、iPhoneで普通に動画を見ているから「こいつらは、ゆくゆく、どういうことに感動するんだろうな?」と思っちゃいます。

 -そうした現状に抗うのが今回の映画

 三浦 そこまで映画業界が変わっていく時代の流れの中で、抗おうと思っている人もたくさんいると思う。ただ、僕たちも数という絶対的な原理の中で生きていかなければいけないことを思うと…例えばテレビなどのマスメディアに対して「違うんだよ」と言うより、我々が動くことによって映画館に人が足を運んでもらうような発言なり、行動をしていくしかないんじゃないかな…映画はいいよ、と。KEE君(渋川)はトークイベントをやったりしているじゃないですか?

 -以前「映画を見て欲しいからイベントには出るけれど、スクリーンの中にいる俳優がイベントをやるのは違うと思う」と発言した

 渋川 トークイベントは、あまり行きたくないというか…。客が入らない時代だから、監督や俳優みんながやっているわけで、本当はそんなことをしなくても客が入らないといけないんだけど、入らないから…。

 三浦 やっぱり、高いっていうのもあるかもしれないね。

 渋川 1回1800円っていうのは…ね。

 三浦 他の国は半分くらいでしょ?

 -届けたいものは?

 三浦 普段から芝居、演技について考えていることを実験的にやらせてもらえたし結構、長く準備期間があって、みんなで作ることが出来た。一般のお客さんに、20年の(時間の)中の思いとか、何か持って帰ってもらいたい。映画業界や同業の俳優が見て、ここまで細かいことを丁寧に作り込んでいるのかと、熱い思いを取り戻すきっかけになってくれたらいいなと思います。

 渋川 自分が出ているだけで、何かちょっとでも違和感が出てくればいい…と思って常にやっていますね。

 三浦 我々みんな、デコボコしている俳優…きれいにツルツルの表面をしている俳優じゃないっていうのが分かっているから。映画の中で出てくる好きだった映画とか「俳優の顔がきれいになった」とかって言うセリフは恥ずかしい。(苦笑い)すごいファンタジックで、ロマンチックで、センチメンタルな映画です。

 三浦の次回作は大作だ。ピース又吉直樹の芥川賞受賞作「火花」(板尾創路監督、11月23日公開)。主演の桐谷健太演じる神谷の相方大林を演じる。お笑いコンビ「トライアンフ」から俳優に転じた三浦は、久々に漫才も披露した

 渋川 楽しみだね。漫才やるの、久々でしょ?

 三浦 久しぶりですし、芸人の役をやるのもいいなぁと思ってやりました。お笑いをやっていたのを知らない人は「役作り、大変だったでしょう?」とか言ってくださるんですけど…満開でやりました(笑い)

 -ネタ作りは楽しい?

 三浦 苦しいです。嫌だなぁと思いながら…。まぁ、桐谷君と一緒にやりながら、漫才の台本があるんですけど「言いにくいことは絶対に言うな」、「自分の言葉でしゃべる」というのを言って、あとは微調整してやっていたら、桐谷君も「さっきの突っ込みの方が面白いから、もっと来て」って。めちゃくちゃ練習しました。それでも(実演が)足りなかった。エキストラが50人くらい、いる日があったので桐谷君に「やることになったから」と言って強制的にやった、その1回目が1番、良かった。その後、500人くらいの前でやったけれど…売れてない芸人のネタやから、50人くらいの狭いところでやる方が面白かった(苦笑い)

 映画を語り出すと話が尽きない…そんな映画愛にあふれた俳優たちが、バーという小さな空間で感情をぶつけ合う。「AMY-」からは映画を愛する熱がほとばしる。【村上幸将】