「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」など、落語をベースにした宝塚歌劇異色作の星組ミュージカル「ANOTHER WORLD」が27日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。

 本拠地の大劇場では初の“落語ミュージカル”。大阪出身のお笑い通トップ、紅(くれない)ゆずるが「上方のはんなり若だんな」にふんし、抜群の喜劇センスを発揮した。

 呼び方は「わし」に「おまはん」。オリジナル楽曲のタイトルは「ありがたや、なんまいだ」。紅は登場するなり、船場言葉を早口でまくし立て、着物の袖を手にかけ、ひょいひょいと軽い足運び。「ほんまでっか」「んなあほな」「おまへんか」「してもらいまひょ」「おまんのや」と、古来からの関西弁を操った。

 「おもしろく、笑わせてやろうと思うと、失敗すると思った。人情ものでもあり、役として1本通っていないとダメ。一生懸命やっているところが、おもしろい。そう見せていきたい」

 紅は稽古中からこう話していた通り、この日も、午前の稽古から全力投球。こっけいさを備えた柔和な上方らしい二枚目「つっころばし」を演じきった。

 対して、東の主人公は男役10年の節目を迎えた礼真琴(れい・まこと)が好演。粋でいなせな江戸の二枚目にふんし、トップ紅との対比で笑わせた。

 1幕の喜劇ミュージカルから一転して、2幕ショー「Killer Rouge」は、攻めのスタイル。「ルージュ(紅色)」をテーマに、紅ら星組スターは、シャープなかっこ良さ、ちゃめっ気を携えた和やかムードと、多彩な“顔”を表現した。

 また、今公演では、3月に入団したばかりの104期生が初舞台。開演前に口上に臨み、初日は首席入団の男役・碧音斗和(あおね・とわ)ら3人が「夢にまで見たあこがれの舞台」「今日のこの喜びは、私たちを支えてくださった皆さまのご助力のたまものでございます」などとあいさつした。

 ショーでは、恒例のラインダンスに臨み、今年のテーマ「紅桜」を手に持った104期生がズラリ。森山直太朗、コブクロら「桜」にちなんだJ-POP、唱歌のメドレーにあわせ、約4分45秒の振付を踊りきり、息の合ったロケットも披露した。

 宝塚大劇場公演は6月4日まで、東京宝塚劇場公演は6月22日~7月22日。