テニスの全米オープンで、日本人で初めて4大大会シングルス女王となった大坂なおみ(20)に関して、紙面にならなかった“幻の取材”が、記者のノートに書いてあります。

決勝戦を翌々日に控えた7日、北海道根室市に住む祖父の大坂鉄夫さん(73)を電話で取材しました。

コメントを求めると「孫が決勝戦に出るのだから、もちろんうれしいよ」「頑張って欲しい」などと話してくれた後で、6日未明に北海道を襲った最大震度7の地震被害に苦しむ人たちに思いをはせていました。「ここは電気が通ったからいいけれど、北海道には、まだ停電している地域も多くあるんだ」。そして「だから、申し訳ないけど、今日のところは記事にしないでほしい」と求めてきました。

記者が「なおみさんの活躍は、被災した人たちに明るい話題を届けることになると思います。だから、ぜひ紙面にしたい」と伝えると、しばらく考えた後で「でも、やっぱり今日は記事にしないでください。お願いします」。そして「9日の試合が終わった後だったら、みんなの家に電気も通っているだろうから、その時ならばしっかりお話をします。試合に勝っても負けて話しますから」と言います。上司と相談をして、この日の取材内容を記事にするのは見合わせました。

そして、優勝を決めた後に電話をすると、受話器の向こうで「この間はすまなかったね」。キチンと記者のことを覚えていてくれました。誠実な人柄が分かりました。

なおみは13日早朝に米国から日本の羽田空港に到着。朝のワイドショーを見ていたら、日本テレビ系の番組で、阿部祐二リポーターが声を掛けていました。「コングラチュレーション!」。これには、ずっこけてしまいました。「おめでとう」でいいはずですからね。