3代目桂春団治一門の落語家、桂小春団治(61)が23日、大阪市内で、のべ20カ国を数えるライフワークの海外独演会を発表し、席上でその裏事情にも言及した。今回は自身初のベトナム、カンボジア公演。6月5日にプノンペン大学、同8日にホーチミン市音楽院、同9日がハノイ大学で公演を行う。

小春団治は、00年のエディンバラ公演を皮切りに、07年までは毎年、海外へ落語を通じての文化交流を行ってきた。1年で複数地域へ行く年もあり、07年には米国、韓国へも渡航していた。

「それが2007年までで、その後は公的助成金が厳しくなりまして…」。多額の自己負担を軽減しようと、07年を最後に資金繰りを再考し、文化交流公演に加えて、日本人の多い地域を選び、邦人向けの有料落語会も並行して行うことで、10年に米・ニューヨーク、フランス、シンガポールで3年ぶりに復活させた。

16年にはニューヨークで「9・11の遺族の方を招いて3年ぶりに開いたんですが…」と言い、新たな変化に言い及んだ。

「最近、日本人の方がニューヨークで公演を行っていますが、客が少ないとやはり厳しい。ですので、満席になるようにチケットを配ったりする。そうすると、ニューヨークの方は、また(招待券が)出るかも…と、買い控えるようになっていました」

日本人が多いニューヨーク公演をめぐる事情が変わり、新たな地域を求めていたところ、大阪に本社を置くアルミ製品の世界的企業の社長と知り合い、工場がベトナムにあることから、資金面も含めて協力を得ることに成功し、今回の公演が実現したと明かした。

もともと、自身の師匠である3代目春団治ら「上方四天王」が再興させた上方落語も人数が増え、若いころから「個性」の発揮の仕方を独自で考えてきたのが小春団治。三味線、太鼓で音響を使い「はめもの落語」と呼ばれる上方落語は、言葉が通じず字幕を用いる海外でも、BGMが有効作用し、武器になることも実感していた。

「日本人は堅い、マジメと思っている人が多くて、例えば『お玉牛』の夜ばいなんて、『え、日本人がそんなエッチなことするの?』ていう感じ。日本文化といえば文楽、歌舞伎なので、落語という古典も知ってほしい」

その思いは今なお不変で、新たな海外公演を模索し、3年ぶりの今公演実現へこぎつけた。

ベトナムへは5~6年前、娘の大学卒業祝いで家族旅行に訪れたことがあるといい「バイクの量がすごい。歩行者信号がないので、どう道を渡っていいのか分からなかった。現地の人はスイスイ渡ってるんですけどね」。海外公演では毎度、ご当地のネタをまくらに入れ込み、距離感を縮めるスタイルをとっており、今回、ベトナムでは「日本の忍者でも(交差点を)渡れないと(まくらを)やろうと思っています」と話していた。