コカインを摂取したとして、麻薬取締法違反の罪に問われたミュージシャンで俳優のピエール瀧(本名・瀧正則)被告(52)の判決公判が18日、東京地裁で開かれ懲役1年6月、執行猶予3年の判決が言い渡された。小野裕信裁判官から5分を超える説諭をされ、芸能界復帰に向けても励ましの言葉を受ける異例の展開。瀧被告はうなずき、反省する様子を見せた。弁護人は「控訴はしません」とした。

 

黒のスーツとネクタイ姿の瀧被告は、落ち着いた表情で出廷した。小野裁判官は「安易に違法薬物に頼ったとの法的な非難は免れず、同情の余地はない」としたが、「妻を含む多数の友人、知人や関係者による絶え間ない支援が期待される」として執行猶予がついた理由を説明。そして瀧被告に視線をやりながら、ゆっくり言葉を投げかけた。

猶予がつくことは温情ではなく、常に刑と背中合わせのリスクを背負うことを強調し「有名人だからことさら重くしたことも手心を加えたこともありません」と説明すると、「あなたが立ち直るために何が必要か、改めて調べる中で1点引っかかったことがあるので確認したい」とし、証拠写真の1枚を被告に見せた。

小野裁判官は「その中にある漢字2文字が気になった。言葉にしていいですか?」と確認し、瀧被告は「はい、どうぞ」。そこには「人生」と書かれた書が張られていたとみられる。「人生」は相方の石野卓球(51)らと80年代後半にインディーズで活動した、電気グルーヴの前身バンド名。今年3月24日、石野は初めてタトゥーを入れたことを明かし「Zin-sayは電気グルーヴ、電気グルーヴは人生」とツイッターに記したこともあった。

小野裁判官は「あなたの活動を調べて、インディーズ時代から何度も出てくる言葉だと分かりました。きっと(当時)仲間と音楽を楽しんでいて、その人が人生という言葉を書いてくれたのではないかと想像します」として、「これからの人生をどうしたいのか? 人生という言葉が持つ意味は何か?」と問い、瀧被告も何度もうなずいた。

さらに小野裁判官は芸能界復帰について「いつか薬物というドーピングがなくても、音楽や芝居でいいパフォーマンスをしていると。むしろ以前よりすごいじゃないか。薬物をやめ続けていると、世間の人がそう見てくれるようになることを切に願っています」と励ましもした。

判決理由なども含めると約10分に及んだ説諭は、小野裁判官の「これから迷ったり悩んだり、孤独になることもあると思う。そんな時こそ、人生と書いてくれた人の気持ちに応えられているか、胸に手を当てて考えてほしい」という言葉で締められた。深々と一礼して退廷した瀧被告は、弁護人に「かみしめます」と話したという。【大友陽平】