歌舞伎の若手俳優が出演する「歌舞伎会」「稚魚の会」合同公演が15日から19日まで東京・国立小劇場で行われた。「歌舞伎会」は幹部俳優に直接入門した名題・名題下の俳優が中心で、「稚魚の会」は国立劇場の歌舞伎俳優研修の修了生の勉強会として発足した。99年から合同公演を行ってきた。

今年は「一條大蔵卿」「棒しばり」「三社祭」「関三奴」「与話情浮名横櫛」で、日ごろは演じることが出来ない大役に、懸命に取り組み、レベルも高いように感じた。

「一條大蔵卿」の一條大蔵卿を演じた中村吉兵衛は、監修・指導した師匠の中村吉右衛門に姿、声、表情がそっくりだった。それだけ師匠の舞台を真剣に見続けてきた結果なのだろう。「棒しばり」で次郎冠者を演じた尾上松悟も躍動して、その動きで観客を楽しませていた。監修・指導に当たった師匠の尾上松緑が演じたばかりで、いいお手本を参考にしたのだろう。

今年3月に研修を終了したばかりの23期生の尾上貴緑も「関三奴」を踊っていた。まだ発展途上だが、23期生の中間発表、卒業公演を見ていたから、その成長ぶりが頼もしかった。

歌舞伎俳優研修の応募者は近年、減少しているという。一時期は20人以上も応募し、そこから数人を選抜していたが、最近は応募者が10人以下の年が続いている。歌舞伎はブームだが、幹部俳優だけでは、舞台は成り立たない。歌舞伎を支える、未来の脇役の育成も急務と言えるだろう。【林尚之】