東京オリンピックを記録する公式映画の監督を務める、河瀬直美監督(50)が23日夜(日本時間)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が呼びかける世界的なオンラインディベートシリーズ「レジリアート」を、日本で初めて開催した。同監督は「文化とコロナウイルス~アートの力を考える~」と題した討論会でモデレーター(司会)を務め、自身がエグゼクティブディレクターを務める、なら国際映画祭公式フェイスブックでライブ配信した。

河瀬監督は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて1年延期になった東京五輪の、公式映画の製作の進行状況について「オリンピック…延期になりましたけれども、私は今、コロナというものに向き合っている全人類の今のありようを、見詰め、観察しながら取材を進めています」と語った。その上で「医療従事者、感染症対策の専門家、アスリートの皆さんがどうしているか。難民選手団の方も取材を進めていて。コロナがあるけれども難民であって…すごい状態の中で訓練して、来年開催されるなら、そこに向かわなきゃいけない人も取材しています」と説明した。

東京五輪については、国際オリンピック委員会のバッハ会長が、英公共放送BBCのインタビューに、2021年に開催されなかった場合、中止となる見通しを認めたと報じられた。河瀬監督は、そのことを踏まえてか「五輪そのものって、今のところ本当にあるかどうか分からないけれど」と口にした。その上で「それに向かって全人類が高めあって、いろいろなことを解決しながら、日本で開催できたら、こんな状態の中で五輪を開催できる方法が、こんなふうにあったんだねと…。まだ全然、見つけられていないけれど、その可能性があるのかと思うと、それを記録することが、本当にすごいことだと思っていて。この現実を記録するのは、すごい役割だと思う」と、コロナ禍で延期を余儀なくされた今、取材することの意義を強調した。

パネリストとして参加した俳優の別所哲也(54)は、河瀬監督の発言を受けて「万が一の話ですよ。本当に来年、五輪はあって欲しいけど、もし、この延長の中で中止になったら、その時こそ河瀬さんを中心に絶対に何かをやるべきだと思います。たった1つの国だけになったとしても、僕たちのオリンピックを世界に発信して…文化の意味でもスポーツの意味でも」と訴えた。

その上で、別所は「不吉なことは言いたくない。絶対にあるだろうし、あるために世界は1つになろうとしていると思う。文化の意味って、世界が1つになること。物理的に東京にみんなが集まれなくても1つになれる。音楽、演劇の力…国立競技場が世界中の人を迎えることが出来なかったとしても、日本の文化人が全部、集まって何かをやるべき。決まった瞬間から動きだすべき」と力説した。

河瀬監督は「私が中心というのは違うと思うけれど…」と笑った。

この日は劇作家で劇団「青年団」を主宰する平田オリザ氏(57)、ギタリストMIYAVI(38)、オランダ・アムステルダム在住のピアニスト向井山朋子が参加した。