映画の配給や出版、映画館やレストランの経営などを行う「アップリンク」の浅井隆代表(65)は19日、元従業員5人からハラスメントを受けたとして16日に損害賠償などを請求する訴訟を提起された件について、同社の公式サイトを通じて謝罪と今後の対応を文書で発表した。

浅井氏は「通常の会社であれば、自分が退くことで会社を刷新させることができるのかもしれませんが、アップリンクは自分1人で始めた会社で、全ての経済的リスクを負ってきました。現在も多額の負債があり、その連帯保証人は自分1人です」などとして退任を否定した。その上で、5項目からなる改革案を明らかにした。

浅井氏は、まずパワハラが発生した要因について説明した。1987年(昭62)に映画の配給会社として1人でアップリンクを創業後、2004年(平16)に東京・渋谷で映画館の運営も始め、100人を超える従業員を抱えるまでの会社に発展させた一方、自らをトップに置く経営、運営を進めたと説明。一方で、特に、ここ2年で東京・吉祥寺と、6月からは京都でも映画館を開業しながら、拡大した規模に応じた組織づくりが出来ていなかったとした。スタッフの過大な負担がかかる中「スタッフに過度のプレッシャーを与えること自体がハラスメントにあたるという認識が自分に欠けていました」と反省した。

従業員への態度についても、これまでに何度も「これはハラスメントである」という指摘を受け、是正するよう言われてきたが、理解できておらず「自分が考えるベストから遠いと感じた場合は、注意をしてきました。その注意が叱責(しっせき)となることも度々ありました。力によって仕事をやらせようとする行為、それこそがパワー・ハラスメントであるという認識が欠けていました」とハラスメントを認めた。その上で「自分自身のマネジメント能力の低さに他なりません。自分の経営者としての力不足、叱責(しっせき)によってスタッフを傷つけたこと、無理な采配で過度な負担をかけてきたことを、深く反省致します」と謝罪した。

今後については

<1>外部委員会を設置し、社外の専門機関に、現在の社内の課題に関して調査を依頼し、コンプライアンスを徹底

<2>ハラスメント防止対策として外部への通報制度・窓口の設置

<3>社内の組織体制整備、とくにマネジメントの体制を整え、スタッフとの定期的な協議を行う

<4>取締役会を設置し、浅井代表1人の取締役という体制から、社内外含め複数の取締役で運営を行うべく準備中

<5>アンガーマネジメントなどのカウンセリングを受け、浅井氏が自身の問題解決に臨み、上司となる立場のスタッフにも研修を受けてもらい、徹底的なハラスメント撲滅に取り組む

浅井氏は文書の最後に「アップリンクは社会の均質化に抗うことを標榜(ひょうぼう)してきました。スタッフは皆、そこに共感してくれた人たちです。今回、提訴にあたって、原告の皆さんが実名で顔を出して会見をしたことはとても覚悟のいることだったと思います。それを深く受け止め、心に刻みます」と、訴えた元従業員5人に謝罪した。その上で「同時に、現職のスタッフ、これまで働いてくれたスタッフの訴えに耳を貸さなかったこと、わかったつもりになって、きちんと対応しなかったことを、深く反省しています」と在籍する従業員にも謝罪した。

そして「アップリンクを応援してくださった皆様に残念な思いをさせてしまい、大変申し訳ありませんでした。会社の運営体制、職場環境を根本的に変えていくこと、そして、もう1度、皆様に応援していただけるアップリンクに生まれ変わることを、ここにお約束致します」と、やり直しを誓った。