今年、デビューから21年を迎えた俳優須賀貴匡(42)が、ベルギーと日本の合作映画「バードソング」(ヘンドリック・ウィレミンス監督)で、初の海外作品に出演した。撮影は3年ほど前だったが、ようやく3日に初日を迎える。このほど、日刊スポーツのインタビューに応じた。

ウィレミンス監督は、ベルギーの人気ロックバンド、アーセナルのメンバー。台本が出来上がっていない段階で同監督に会い、映画の話を聞いた。須賀は「映像と音楽を融合させた作品を作りたいんだと聞きました。ザ・日本の映画監督とは違う、感覚的な話をたくさん聞いて新鮮でした」と振り返る。

現場は初めてだらけだった。テストがないことや、直前にせりふが変わることはしょっちゅう。その日のシーンを当日渡されて撮影することもあった。共演シーンが多かった大ベテランの麿赤児でさえ、驚いていたという。

驚きの連続だったが、これまでの経験が楽しむ余裕を与えてくれた。「戸惑いや、どう料理されるのかを楽しめました。若かったら、戸惑ったままで終わっていたかもしれないですが、照明もすごく作り込んでいたし、みんなが映画のチームとしてすごく優秀だった。どうなるんだろうと期待感を持って撮影していました」と話した。

映像と音楽を幻想的にミックスして描いた「バード-」から大きな刺激を受けた。「(海外作品に)チャンスがあれば出たい。アート的要素が強い映画に興味があります」と意欲的だ。撮る側にも興味を持っている。もともと自主映画製作の経験もあり、「映像の監督はいつかやってみたい」と語る。

99年にデビューし、俳優生活は20年を超えた。転機になった作品を聞くと、まず挙がったのは、02年に主演した「仮面ライダー龍騎」だ。「世間的に皆さんに認知してもらって大きな転機でした。ようやく俳優業がスタートできたような作品です。無我夢中でした。スタッフさんにはいろいろ教えてもらいましたが、よく怒られましたね。遅刻だけはするな、体は現場に来い、とか」と話す。

もう1作は、映画「魁!! クロマティ高校 THE★MOVIE」だ。「山口雄大監督との出会いは大きくて、コメディーセンスを勉強させてもらいました。どう笑いを計算してつくっていくか、というところを学びましたね」。ここ最近は、コメディー作品への出演はあまりないが「やりたいですよ!」ととびきりの笑みを見せた。

失敗や経験を経て、映像、舞台などさまざまな分野で活躍する。今後は朗読企画の準備が進んでいる。

理想の俳優像を聞くと「理想や目標を強く抱かなくなりました。シンプルに目の前のことをしっかりできるかで未来は変わる」と、気負わずとも力強い答えが返ってきた。【小林千穂】