国立劇場で上演中の「12月文楽公演」、1部、2部とも、悲壮な人間ドラマが描かれていて、必見だ。

第1部は「仮名手本忠臣蔵」から、早野勘平腹切の段など。主君のあだ討ちに参加できなくなってしまった早野勘平が、義士に加えてもらうまでの一連の段。

文楽でも歌舞伎でも、何度も何度も上演されている作品。勘平は義父を殺してしまったと勘違いして切腹してしまうのだが、これが早とちり。

勘違いや思い込み、ちょっとしたボタンの掛け違いで、悲劇が起こる。勘平が残される義母にかける言葉、主君への思い、人形の繊細さ、豊竹靖太夫の語り、三味線が全部が一緒になって胸に迫った。

第2部は「桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」。帯屋の旦那・長右衛門と隣家の娘お半との間違い事が、これまた悲劇を起こす。旦那も妻もそれぞれが思いやっているのに、疾走するように悲しい方向へ向かっていく。どうしようもないのか、どうにかならないのかと、登場人物に問いかけたくなった。すべてがむなしく思えるくらい、物語にのめり込んだ。

公演が終わるとなぜか、自分も、長右衛門の最後と同じように駆けだしたくなってしまった。すごいいいもの見たなあ、を久々に味わった。

文楽になじみがない人には、ぜひ「文楽鑑賞教室」をおすすめしたい。文楽の基本的なことを、分かりやすく、実演しながら教えてくれる。人形遣いが操ると、命を吹き込まれるとはこのことか、というくらい人形が生き生きと動く。感動的です。