月刊映画誌「映画秘宝」を編集、制作する合同会社オフィス秘宝の岩田和明編集長が、同誌の公式ツイッターから、どう喝的なダイレクトメッセージ(DM)をツイッターユーザーの女性に送った問題で2日、同社は、岩田氏が編集長を辞任した上で退社すると発表した。

「ご報告:雑誌『映画秘宝』元編集長・岩田和明より悪質なDMを送付した件について、被害者・関係者・読者の皆様にご迷惑をおかけしたため、編集長を辞任するとともに、合同会社オフィス秘宝を退社したい旨、申し出があり、当社は受理いたしました」

事の発端は、岩田編集長が、同5日にTBSラジオで放送された「アフター6ジャンクション」に出演し、同8日発売の「別冊映画秘宝 決定版 韓国映画究極ガイド」や韓国映画について語ったことに対し、一部の女性リスナーが同17日に苦言のツイートをしたことだった。同編集長は同午後12時58分に、同誌の公式ツイッターアカウントから女性リスナーのツイッターアカウントに、以下のDMを送った。

「突然、たいへん失礼いたします。今、心の底から深く深く心が傷付き、胸が張り裂けそうなほど大きなショックを受けて、死にたいです。私は、『俺たちの~』も『ポンコツ』も、いちども言ったことがありません。純粋な悪口ということでしたら、これは誹謗中傷でしょうか。いま、胸が締め付けられるほど苦しくて、呼吸が乱れており、壊れそうなほど深く心が傷付き、あまりのショックの大きさから、何も手が付けられない状態にいます。死にたい。」(原文のまま)

合同会社オフィス秘宝は、1月25日にツイッターで取締役の田野辺尚人執行役員、町山智浩、柳下毅一郎両相談役、編集部一同連名で文書を発表し、経緯を説明した。岩田編集長は聞き取りに対して「仕事などで疲労とストレスが溜まっていた際に、小誌編集部に対する意見を書かれているツイートを拝見し、その内容によって頭に血が昇り衝動的に攻撃的な内容のダイレクトメッセージを送った」と述べたという。そのことに対し、編集部の見解として「雑誌という公共性を持ったメディアが個人に対して攻撃を加える行為を、断じて許せない行為だと考えます。被害者の方に深く謝罪を申し上げます」と謝罪した。

その上で、岩田編集長が編集部に謝罪文を送る前に、DMを送った女性リスナーに対して直接、電話で連絡していたと明らかにした。文書では「看過することができない」とした上で「預かり知ることができませんでした。謝罪のためとはいえ、被害者にとって暴力的であり、それを未然に防ぐことのできなかった責任は編集部にあると考えております」とした。

その上で「『映画秘宝』は映画から、差別や暴力の恐ろしさを学び、その上で弱者に寄り添うことを編集上のポリシーとして雑誌の制作を続けてきておりました。今回の岩田の行為は、本誌の心情と真っ向から対立する、許しようのない行為です」と岩田編集長を批判した。

発行元の双葉社も同26日夜、公式サイトで謝罪のコメントを発表。同編集長が編集部に断りなく、当該女性リスナーに電話したことに対し、「個人情報を含めた情報共有の過程においても、その取扱いについて弊社としても慎重さを欠いた対応となってしまいました」(コメントは原文のまま)とコメントした。

「映画秘宝」は1995年(平7)に田野辺、町山両氏が創刊し洋泉社から出版。20年2月に同社が宝島社に吸収合併され、解散したことを受けて同1月21日の同3月号を持って一時、休刊した。その後、休刊時の編集長だった岩田氏らが合同会社オフィス秘宝を結成し、「映画秘宝」の商標権を取得した上で、双葉社から4月21日に6月号を発行し、復刊した。独自色の強い編集方針は、芸能人、文化人、著名人にも支持者が多く、復刊は大手メディアでも広く報じられ、話題となった。