テレビ朝日の東京五輪メインキャスターを務める松岡修造さん(53)に、「五輪特集面」(9日付)のために6年ぶりに話を聞いた。

と、いっても5年前はバリバリのメイン記者として聞いたのだが、今回は若手記者の“お付きの爺や”としての役割だ(笑い)。

来月23日の開幕まで、10日現在であと43日。新型コロナウイルス禍で開催への賛否が割れる中、取材陣以上に難しい立場にあるのがキャスターを務める面々だ。開催、中止、どちらの立場でも批判を受けるのは必至。ましてや、取材翌日に紙面化されるニュース面と違い、取材から掲載まで間隔が空く特集面ならではの難しい問題がある。

取材後に中止が決定されたら紙面はどうなるのか。そうしたもろもろの問題を抱える中で、取材をお願いしたのが松岡さんだ。今大会で9大会連続のメインキャスターという経験。そして何より期待したのが、その“応援力”だ。万が一、コロナ禍が収拾つかなくなって、掲載日までに中止が決定してしまったら、コロナと闘う日本を応援してもらう紙面に変えるしかない、などと考えながら取材に臨んだ。

だが、キャスター松岡修造は、私たちの杞憂(きゆう)や想像のはるかに上を行く答えを出してくれた。「大会が開催された時の選手たちの『ありがとうオリンピック』」「みんなの思いが『つながるオリンピック』」と歯切れよくメッセージを送ってくれた。そして、キャスターとして選手たちのメッセージを伝える使命感を口にした。

五輪の開催が危ぶまれる中で、陸上、水泳、柔道など五輪が最高峰に位置する競技と、松岡さん自身がプレーヤーだったテニスやサッカー、ゴルフなど、他に最高峰に位置付けられる大会や試合がある競技の違いについても詳しく話してもらった。

松岡さん自身はテニスの日本代表として、88年ソウル、92年バルセロナ、96年アトランタに3大会連続で出場した。自身の試合はもちろん、他の日本代表選手を応援する姿も印象深かった。

松岡さんは「選手として五輪に参加する中で、五輪が最高峰の競技、例えば柔道の田村亮子選手が非常に大きな期待を受けながら闘っていく姿を、すぐそばで見ることで得るものがあった」と話してくれた。我々、取材記者がどれだけ密着しようとも踏み込めない、トップアスリート同士ならではの領域についても話してくれた。私と後輩記者はもちろん、テレビ朝日の関係者とも取材後に「さすが松岡修造、私たちが考えていたことよりもずっと上を行っていた」と盛り上がり、元気をもらった。

ちなみに6年前の取材は、まだ野っ原だった東京・有明の体操競技会場建設予定地で行われた。3月の肌寒い日で松岡さんの到着を持つ間、今にも雨が降り出しそうな雲行きが不安だった。だが、松岡さんが到着した途端に雲が消え、明るい日差しが差してきた。その“修造マジック”に居合わせた一同、深く感じ入ったのを覚えている。

今回の五輪も松岡修造キャスターが、不安をなぎ払って選手の思いを日本中、そして世界へと発信してくれると期待している。