3月末まで東京・帝国劇場で上演され、大反響だった舞台「千と千尋の神隠し」に、3人の新潟県出身者が出演している。13日の大阪公演(梅田芸術劇場)開幕へ向け、魚沼市出身のお笑い芸人、おばたのお兄さん(33)、村上市出身の武者真由(39)、新発田市出身の松之木天辺(47)のインタビューを全4回に分けてお届けする。

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-おばたは青蛙(かえる)役、武者は坊やススワタリ、松之木は神様やススワタリ、湯婆婆コウモリなどをそれぞれ演じている。出演決定の経緯や心境は?

おばた 本当に「千と千尋の神隠し」というものは出たい作品で、子どものころからずっと見ていて、アニメーションというくくりの中で一番好きなアニメなので、本当に夢がかなったというか、夢の中で今も動いているというか、夢の中の湯屋で働いているみたいな感覚で。もう本当に、下手したら人生で一番うれしかったというぐらいうれしかったですね。

武者 去年の春ごろにオーディションありますっていうのをいただいて、1次受かった、2次受かったみたいな。で、コロナ禍だったので(演出家)ジョン(ケアード)とのリモートでのオーディションになって、ジョンがものすごいすてきな方で、うわあジョンとご一緒したいなって、それこそ神頼みみたいな感じで結果を待っていて。受かった時はやった~! みたいな。ものすごくうれしかったですね。

松之木 振り付けの井手(茂太)さんという、コンテンポラリーダンスカンパニーの方がいらっしゃって。そこで(自分が)よく踊っているので、井手さんから声かけてもらって。普段は香川県の小豆島に住んでいるので、なかなか直接は行けないということで、リモートでダンスの動画を送らせていただいたところ、ジョンがすごく喜んでくれて紛れ込ませていただきました。

-役作りで意識していることは?

おばた 小さいころからいろんなモノマネとかよくやっていて、もちろん、青蛙もレパートリーに入っていたので、僕からしたら20年やってきているキャラクター。めちゃくちゃうれしかったですね。日の目を浴びない20年がここにきて、まさか舞台版の第1号になるとは思っていなかったですね。青蛙は、アニメとか見返していても、目立ちたがり屋なところがあって、ちっちゃい頃の自分にすごく似ているんですよね。人前に立ちたいけど、損はしたくないみたいな。そういう自分を思い出しながらやっている部分はすごくありますね。みなさんが言っているセリフをおうむ返ししているだけなんですけど、あたかも自分主導のセリフみたいにして、おれが最前線でいってんだみたいな。青蛙がパペットなんですけど、YouTubeで「カエル 映像」で調べて、ちゃんとつま先で地面をとらえて跳ぶっていうような前の進み方みたいなのはやっぱり研究しましたね。ぬいぐるみに絶対に見られたくないので。ちゃんと命があるように見せたいので、そこの努力はしたかな。

武者 坊に関しては、あの部屋だけで育ってきた子でわがままで自分が王様みたいな感じだけど、嫌な子にならないように、ちょっと気をつけようかなって思っていて。(魔法で)坊ネズミになった時に愛されるように、つながるようにしたいなって思っています。坊ネズミのかわいさをそのままポンッと大きくなったようなグラデーションにしたくて。

松之木 誰もわからないかもしれないけど、自分の中での設定、ドラマを作ろうとしています。神様だと、勝手にメークしてみたんですよね。そうしたらジョンにファンタスティックって言われて。一幕の最後にメークがっつりで出るんですけど、2幕の最後にもちょっとだけ出る。その時は猛烈な早着替えで、衣装着るので精いっぱいでメークできないので、ほっぺたに赤い丸をつけて、湯上がりという設定にして、手ぬぐいと牛乳瓶を持って出ています。汗を拭きながら湯上がりのいい気持ちみたいにして。そういう細かなことも何となくいるんじゃなくて、必然的にそこにいるという設定、ドラマを持つようにしています。ススワタリのドラマもあります。そういうドラマがないと豊かにならないと思っている。大きな舞台になると、細部にこそドラマが必要というか、そこのところのドラマも埋めていきたいなと思ってやっています。日々なんか面白い積み重ねが出来たら。

◆松之木天辺(まつのき・てっぺん) 1974年(昭49)4月28日、新潟県新発田市生まれ。98年オペラ劇団「オペラシアターこんにゃく座」入団。04年からコンテンポラリーダンスカンパニー「黒沢美香&ダンサーズ」などでダンサーとして活動。17年から香川県・小豆島を拠点に創作活動をスタート。ミュージカル「ラ・マンチャの男」など出演。178センチ、血液型B。

◆武者真由(むしゃ・まゆ) 1982年(昭57) 8月1日、新潟県村上市生まれ。昭和音楽大学声楽科卒業後、05年ミュージカル座入団。舞台を中心に活動。ミュージカル「ロイヤルホストクラブ」、ミュージカル「コンチェルト」、ミュージカルコメディー「ロイヤルホストクラブ」、舞台版「こちら葛飾区亀有公園前派出所」など出演。156センチ、血液型A。

◆おばたのお兄さん 1988年(昭63)6月5日、新潟県魚沼市生まれ。日本体育大学卒業後。東京NSC18期生で、13年にお笑いコンビ、「ひので」としてデビュー。16年に解散後はピンで活動。小栗旬のモノマネで注目を集める。21年、ミュージカル「ウェイトレス」など出演。妻はフジテレビの山崎夕貴アナウンサー。166センチ、血液型B。