上方演芸界で最も長い歴史を持つ「第57回上方漫才大賞」が9日、大阪市内で発表され、漫才コンビのミルクボーイが大賞を初めて受賞した。19年にM-1グランプリを獲得後も大阪を拠点に活動を続け、上方漫才大賞を大きな目標にしてきた内海崇(36)と駒場孝(36)は悲願達成に涙を見せた。

舞台に「命の恩人」(駒場)という姉妹漫才コンビ海原やすよ・ともこがサプライズで花束を持って登場すると、2人の目に涙があふれた。「おめでとう」。祝福の言葉に2人は込み上げる思いを抑えることができなかった。

ミルクボーイは07年に結成。15年ごろから2人は漫才の壁にぶち当たり、内海はギャンブルにはまり、駒場は先輩と飲み歩く時間が増えたという。

どん底のとき、交流のあった先輩のやすとも金言があった。「『昔ちゃんと(漫才)やってたんやったら、もう1回ちゃんとやったら?』と言ってくれた。2人で話して、もう1度、頑張ろうと。そこから再出発した。おふたりがいなかったら、漫才をやっていたかどうかも分からない。命の恩人です」。そう打ち明けると、駒場は涙をぬぐった。

先週水曜日にトレードマーク、角刈りの散髪をしたばかりの内海は「漫才をやっているからには絶対にいただきたかった賞。漫才の歴史に名を刻めた」と喜んだ。

大賞の賞金は200万円。使い道について、行きつけの大阪市内の理容店店主に「M-1のときは52万円のイスをプレゼントしたんで、今回はハサミかバリカンか…。おっちゃんが演歌歌手デビューしたんで、衣装でもプレゼントしたい」と笑わせた。3月に第1子男児が誕生したばかりの駒場は「子供の誕生と合わせて記念になるようなもの」と話した。

上方演芸界で最も歴史があることで知られる上方漫才大賞の歴代の受賞者には、横山やすし・西川きよし、オール阪神・巨人、海原やすよ・ともこらが名を連ねる。大賞は年度を通じて寄席や放送などで最も活躍した漫才師らに贈られ、何度でも受賞できる。

内海は「今後も大阪から全国に発信していきたい」と意気込みを語り、駒場は「1つの目標は達成できた。でもきょうからがスタート。漫才の大海原に出た。師匠と入り交じって、上方漫才界での戦いの舞台、違うステージに上がらせてもらった」と決意を語った。 奨励賞は兄弟漫才コンビのミキ、新人賞はニッポンの社長が選ばれた。