是枝裕和監督(59)が19日、ツイッターを更新し、監督が俳優に演出することに関して、持論をつづった。同監督は「役者さんを精神的に追いつめて演技を引き出すようなことを自分はしていないつもり。でもだからと言って自分以外の方法を簡単には否定出来ない」とした。その上で「もちろんパワハラは論外。でも正解に導くことだけが演出じゃない。待つ。そして役者に発見させる。自ら発見するまで静かに待つのは愛のある演出だと思うよ」と、自らの演出に関する信念をつづった。

是枝監督は、諏訪敦彦監督、岨手由貴子監督、西川美和監督、深田晃司監督、舩橋淳監督と「映画監督有志」として活動している。その主たる目的は、フランスの映画行政を管轄する国立映画映像センター(CNC)、韓国の韓国映画振興委員会(KOFIC)といった他国の公的機関のように、製作や配給への助成金を出したりなど、映画業界において持続可能なシステムを日本国内に作ることだ。そのために、日本映画製作者連盟(映連)に働き掛けも行っている。

3月9日に「文春オンライン」が、榊英雄監督(51)が映画へのキャスティングを持ち掛け、複数の女優に性的関係を強要したと報じ、同監督がその一部を認め謝罪したことに、映画監督有志は反応。報道から9日後の18日に「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。」と題した声明文を発表した。

そこでは「映画監督による新たな暴力行為、性加害が発覚しました。報道されている行為、その内容は決して許されるものではありません。被害にあわれた方々がこれ以上傷つくことがないこと、また当該の映画監督の作品において権限のある立場の関係者は、その現場で同様の問題がなかったかを精査すること、もしあった場合には被害者のために何ができるかを検討することを望みます」などと訴えた。

声明文の中には、映画監督の演出についても触れられている。「特に映画監督は個々の能力や性格に関わらず、他者を演出するという性質上、そこには潜在的な暴力性を孕み、強い権力を背景にした加害を容易に可能にする立場にあることを強く自覚しなくてはなりません。だからこそ、映画監督はその暴力性を常に意識し、俳優やスタッフに対し最大限の配慮をし、抑制しなくてはならず、その地位を濫用し、他者を不当にコントロールすべきではありません。ましてや性加害は断じてあってはならないことです」

是枝監督をはじめとした映画監督有志は「映画の現場や映画館の運営における加害行為は、最近になって突然増えたわけではありません。残念ながらはるか以前から繰り返されてきました。それがここ数年、勇気を持って声を上げた人たちによって、ようやく表に出るようになったに過ぎません。被害を受けた多くの方がこの業界に失望し、去っていった事実を、私たちは重く受け止めるべきではないでしょうか」と、映画業界では以前からハラスメント行為が行われていたと指摘。

その上で「私たちには、自らが見過ごしてきた悪しき慣習を断ち切り、全ての俳優、スタッフが安全に映画に関わることのできる場を作る責任があります。そのために何ができるかを考え、改善に向けたアクションを起こしてゆきます」と、今後の活動方針をつづっている。