反プーチン政権派のロシアのパンクバンド「プッシー・ライオット」のメンバーが、ウクライナ侵攻を巡って反体制派への弾圧を強めるロシアから国外に脱出したことが分かった。リーダ-のマリア・アリョーヒナ(33)が、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで警察の監視を逃れるためにフードデリバリーの配達員を装って国外脱出に成功したと明かした。現在はアイスランドに滞在しており、ウクライナ支援イベントへの出演を企画しているという。

アリョーヒナは過去10年にわたってプーチン政権への抗議活動を行っており、これまで複数回にわたって逮捕、収監されている。ウクライナ侵攻を巡っても公然と批判し、SNSでウクライナ支援活動をしていたことなどから、自宅軟禁状態に置かれていたという。当局が21日間の実刑判決を決めたことを機に脱出することを決断。配送員に扮(ふん)して追跡を逃れるため携帯電話も残したまま友人の車でベラルーシの国境を目指し、そこから1人で越境し、さらにそこから隣国リトアニアに渡ることにも成功したという。報道によると、パスポートを没収されていたことからベラルーシへの入国を2度拒否されるなどトラブルに遭遇しながらも、アイルランド人のアーティストの協力を得てEUに渡航できる書類を入手できたことなどを明かしている。

アリョーヒナのパートナーで同バンドのメンバー、リューシャ・シュテインも先月ロシアからの脱出に成功しており、自身のSNSに配達員に扮したアリョーヒナの写真やアイスランドで合流して撮影したと思われる2人の写真を投稿している。アリョーヒナは、「ロシア大統領府は大きな悪魔のように見えるが、実際には当局は内側から見ると非常に混乱していたため、ロシアを脱出することができた」と述べ、帰国を望んでいるもののすべての活動家は投獄または追放さていることから、「どうしてよいか分からない」と語っている。

プッシー・ライオットは、2012年にモスクワのロシア正教会救世主ハリストス大聖堂で反プーチン政権とロシア正教会に反対する抗議の歌を演奏して世界的にその名が知られるようになった。それによってメンバーは逮捕され、懲役2年の実刑判決を受けている。(ロサンゼルス=千歳香奈子)