ヒット曲「手紙」やTOKIOらへの楽曲提供で知られるシンガー・ソングライター樋口了一(58)が俳優デビューすることが7月31日、分かった。来夏公開予定の映画「いまダンスをするのは誰だ?」(古新舜監督)で主演を務める。

仕事一筋で家庭を顧みずに生きてきた主人公(樋口)が若年性パーキンソン病と診断されたことをきっかけに、周囲の人たちとの交流やダンスを通じて生き方を見つめ直していくストーリー。

実は樋口自身もパーキンソン病と闘っている。09年頃から、ギターが弾きにくく、声が出しづらいといった体の不調を感じ始め、パーキンソン病と診断された。現在も病気と闘いながら音楽活動を続けている。

初の演技経験でいきなりの主演に「実は映画主題歌のお話を先に頂いていた」と明かすのは樋口自身だ。「主演の話を聞いた時は正直驚きました」と素直に語り、「歌のオファーであればいくらでも応えられるのですが、映画の出来を左右する主演というのはうれしくもあり、無理だろうという思いもありました」。しかも、役柄が自身の病気と重なっている。「映画で描かれる姿と自分の症状は一緒ではないので、その病気の役を演じるということは逆に難しいと思いました。たぶん撮影の中で僕自身の病気の症状も出るかもしれませんが、当事者だから分かることが伝えられたらと思います」。戸惑いもありながら、最終的には出演を決め、真摯(しんし)に演技に向き合っている。

古新監督は「パーキンソン病という難病と向き合いながら歌手活動をしている樋口さんの存在はかねがね気にかかっておりました。自分の運命を受けいれ、難病を勇気をもって自己開示し、音楽活動を果敢に挑戦し続けているお姿が、この映画のメッセージととてもシンクロしていることを感じ取りました。ユーモラスさと燃え上がる情熱、誰しもを包み込む包容力、この三位一体の人間性を持つ樋口さんに魅了され、自信をもってオファーさせていただきました」と起用理由を話している。

また、樋口が歌唱する主題歌「いまダンスをするのは誰だ?」は9月7日にデジタル配信リリースされる。

◆樋口了一(ひぐちりょういち)1964年(昭39)2月2日生まれ。熊本県出身。93年に「いまでも」で歌手デビュー。北海道テレビの人気バラエティー番組「水曜どうでしょう」のテーマソング「1/6の夢旅人2002」や「手紙~親愛なる子供たちへ~」(08年)がヒット。「手紙」は翌年の「日本有線大賞」有線音楽優秀賞や「日本レコード大賞」優秀作品賞を受賞。また、SMAP、TOKIO、関ジャニ∞、石川さゆりなどに楽曲提供を行う。12年にパーキンソン病であることを公表。現在は熊本を拠点にして音楽活動を続けている。