映画業界において持続可能なシステムを日本国内に作ることを目指す、権利能力なき社団「日本版CNC設立を求める会」は30日、09年「マイマイ新子と千年の魔法」や16年「この世界の片隅に」などで知られる、アニメーション監督の片渕須直氏(62)が運営メンバーに加わったと発表した。
運営メンバーには是枝裕和(60)、諏訪敦彦(62)、内山拓也(30)、岨手由貴子(39)、西川美和(48)、深田晃司(42)、舩橋淳(47)の各監督が名を連ね、約2年前から話を進めてきた。アニメーション監督の片渕氏が運営メンバーに加わった意義について、同会は公式サイトで「運営メンバーにアニメーション監督の片渕須直さんをお迎えすることが決まりました。実写もアニメーションも映像表現の歴史において共に影響をしあいながら発展をしてきました」と説明。その上で「表現手法の垣根を越えて、映像分野で広く連携を行い、日本版CNCが未来に担うべき支援の4つのアクション、『教育支援』『労働環境保全』『製作支援』『流通支援』を実現できるよう、引き続き尽力をしていきます」と、実写とアニメとの連携の重要性を強調した。
片淵監督も、同会を通じてコメントを発表。「3年前に自分の作品のための新しいスタジオを作り、そこでは、これまで制作現場で自分たちがやってきたことを次世代につなぐため、教えながらものづくりをするという態勢を取っています。現状、アニメーションの制作一般が、納期に間に合わせることだけにあくせくするあまり、次々と簡易化した制作方法を取ってはそれを定式化してしまって、本来のものづくりのスタイルが忘れられていく中での、抵抗の意味でもありました」と運営メンバーに入った理由を説明した。
その上で「映画を作っては各地の劇場を回ることも行ってきましたが、新型コロナの状況下で映画興行の現場が傷ついている様子にも多く接しています。なかには、まだ東日本大震災で被った被害さえ回復できないままの劇場すらあるのです」と、コロナ禍だけでなく、発生から11年が経過した東日本大震災の、エンターテインメント界に与えたダメージが、いまだ残っている現状を強調。「こうした中で、多方面にわたるセーフティーネットワークを作り、映像界のこの先に未来を抱き直したいとするa4cの行動には、かねて賛同の意を表してきました。ここへ来て、アニメーションの業界への橋渡しとなる意味で運営に加わらせていただくことになりました。よろしくお願いいたします」と、実写とアニメ界の橋渡しをしたいとした。
日本版CNC設立を求める会は、6月14日に都内で会見を開いた。その中で、フランスの映画行政を管轄する国立映画映像センター(CNC)、韓国の韓国映画振興委員会(KOFIC)など、海外の映画界に存在する映画の充実した共助制度に接し、同様のシステムの必要性を感じ、映画を守るために日本映画界が連携して新たな仕組みを作ることを目指すと説明した。
具体的には、業界内を横断的に統括し、支援金を分配する、映画業界が「共助」するための支援基金を立ち上げることを目指すと強調。
<1>教育支援
<2>労働環境保全
<3>製作支援
<4>流通支援
を支援の柱とした上で、CNC同様、劇場からの興収と放送、配信事業者からの徴収を財源と考えていると説明した。
日本版CNC設立を求める会は、日本映画製作者連盟(映連)とも1年前から話し合いを続けてきた。ただ是枝監督は、財源として想定している劇場からの興収と放送、配信事業者からの徴収については「映連を敵に回したいわけじゃないですが、動かない。絶対不可能だと言われ、映連と1年、話をしても動かない。映連の中でも考えを共有できている人もいるが(財源の扉は)開いていない」と現状を説明。「業界全体が一枚岩になって、初めて公的な連関に向かうべき。お金を出してもらうと口を出す、というところの意識改革をし、どう巻き込んでいくか。文化庁、経産省の垣根をどう取っ払い、合流させていくかが、その先に必要」と強調していた。
日本版CNC設立を求める会は23日、映連に対し提案書兼質問書を提出したと発表した。その中で、同会が21年2月24日、映連の島谷能成会長(東宝)に提出した提言書「日本版CNC(仮称)発足に向けて~映画界の共助システムの構築~」を受けて、映連が事務局で「日本版CNC/KOFIC研究会」を開催し、継続的な意見交換の場を提供したことに一定の評価を示した。
一方で「その後1年4カ月にわたり研究会での議論、検討を通じて提案を行ってきましたが、貴会からこの財源の問題に関して解決に向けた具体的な打開策は未だ得られておりません。また、非公式な『研究会』という性質上、ここでの議論の成果が貴会の事業や意思決定にどのように関与するのかも定かではありません」と具体的な動きが見えないことに疑問を呈した。その上で
<1>[日本版CNC]の設立は必要ですか?
<2>興行収入を[日本版CNC]の財源の一部とすることを検討していただけますか?
<3>[日本版CNC]の設立に向けて正式な「検討委員会」を設置していただけますか?
と3つの質問を提起し、8月末までの回答を求めている。
6月14日時点の、日本版CNC設立を求める会の賛同者は以下の通り(50音順)
井浦新(俳優)
石井千晴(助監督)
犬童一心(映画監督)
岩崎ゆう子(一般社団法人コミュニティシネマセンター事務局長)
大高健志(MOTION GALLERY代表/映画プロデューサー/ミニシアター・エイド基金)
岡本英之(映画プロデューサー/ミニシアター・エイド基金)
片渕須直(映画監督)
黒沢清(映画監督)
小泉今日子(俳優/プロデューサー)
齊藤工(俳優/映画監督)
坂本龍一(アーティスト/作曲家)
白石和彌(映画監督)
高田聡(映画プロデューサー/ミニシアター・エイド基金)
仲野太賀(俳優)
濱口竜介(映画監督/ミニシアター・エイド基金) 水原希子(俳優/モデル)
役所広司(俳優)
山田洋次(映画監督)
行定勲(映画監督)
横浜聡子(映画監督)
吉永小百合(映画俳優) 渡辺真起子(俳優)



