最後まで笑顔だった。年内でコンサート活動を終了する歌手加山雄三(85)が9月9日、東京国際フォーラムホールAで、62年の歌手活動で最後となるホールコンサート「ラストショー~永遠の若大将~」を行った。

加山は8月28日に日本テレビ系「24時間テレビ45」に出演。自身作曲の番組テーマソング「サライ」の同番組でのラスト歌唱を行っており、今回のコンサートでまたひとつ、活動に区切りをつけた。同番組を取材したことや、私の姉が加山の大ファンであることもあり、今回はチケットを購入し、姉弟でプライベートで会場に足を運んだ。

コンサートは2部制で行い、1部で9曲、2部で14曲、アンコール、ダブルアンコールで4曲の計27曲を披露した。冒頭ではスクリーンに「幸せはここにある」の文字を表示。幼少期から今までの映像を流すなど、ファンへの感謝の思いを込めた内容にもなっていた。

「昔から誰もやったことのないことをやるのが大好きなんだ」と2部の1曲目では、AIの“バーチャル若大将”が「そして陽は昇りつづける」を単独で歌唱。次曲の「旅人よ」で加山本人が「俺いらないんじゃないの」と語りながら登場し、ダブル加山の2人でデュエットを披露した場面はほほ笑ましかった。

コンサート活動は終了するが、今でも新曲制作に精を出すなど音楽への情熱は尽きない。公演中にも「家の戸棚を開いたら、古いテープが落っこってきた。すごくたくさんある」と語り「いい感じの曲が多いと思うんだ。詞がついていないから、詞を付けてレコーディングをしたい。楽しみにしてほしい。エレキやギター、ピアノで音が取ってあるから、音が残っているんだ」と笑顔で話していた。

サプライズもあった。2部の終盤。「9月4日は結婚記念日なんだ」と妻の美恵子さん(元女優の松本めぐみ、75)へ届ける「September 4th」を熱唱。曲中は、偶然、近くに座っていた美恵子さんにスポットライトが当てられており、夫婦の絆を感じさせた。

加山は「こんなにいい結婚はない。4人の子どもに恵まれて4人の孫がいる。たいしたもんだね。みんないい子に育って。その元気で何よりも幸せ。その元を作ってくれたお母ちゃんに心を込めて歌を歌いたい」と感謝。同曲が生まれたきっかけにも触れ「結婚式場の隣にチャペルがあって、そこにパイプオルガンがあった。それで生まれた曲です。なぜワルツなのか。ワルツって愛を伝えるんだって。音楽を親友と思って生きてきて良かったなとつくづく思いますね。音楽を愛してきて良かった」。美恵子さんも涙ぐみながら話に耳を傾けていた。

アンコールでは「サライ」や「君といつまでも」などを披露し、約5000人の観客から大きな拍手を浴びた。加山は感謝を語りながら「幸せを幸せに思う気持ちは大事にしているんだ。ありがとう」と応え、最後は客席へ振る右手を力強く握りしめた。24時間テレビの時と同様、涙はみせず、朗らかな笑顔で約2時間半の公演を終えた。

終演後、スクリーンには「幸せだなあ 加山雄三」の文字が映し出された。加山は12月に名誉船長を務める豪華客船「飛鳥2」の船上ライブを行い、コンサート活動を完全に終了する。9月13日には10月9日に静岡・富士山麓で開催される野外音楽フェス「朝霧JAM」最終日に出演することも発表。感謝の思いを伝えながら、年末の大団円へのラストスパートは続く。【松尾幸之介】