映画業界において持続可能なシステムを日本国内に作ることを目指す、権利能力なき社団「日本版CNC設立を求める会」は26日、、日本映画製作者連盟(映連)から、8月23日に提出した提案書兼質問書への回答が届いたと公式サイトで発表した。同会は

<1>[日本版CNC]の設立は必要ですか?

<2>興行収入を[日本版CNC]の財源の一部とすることを検討していただけますか?

<3>[日本版CNC]の設立に向けて正式な「検討委員会」を設置していただけますか?

と3つの質問を提起し、映連に対して8月末までの回答を求めていた。

日本版CNC設立を求める会は、映連からの書面の画像をアップした上で、映連の回答の要旨と、会としての意見を発表した。

「質問1については『日本映画界における自律的で循環的な共助のシステム構想については、当連盟としても総論で賛成である』ことが正式に言明されました」

「また、質問3については『本件議論に特化した渉外部会を設置し、新たな体制を構築』したとの報告がありました。同部会の具体的な構成や目的について明言がありませんでしたが、新たな体制によって『日本版CNC』実現へ向けた主体的な取り組みが行われることが期待されます。以上2点については、前向きな回答であると受け止めます」

とした。

一方で、2つ目の質問で提起した、興行収入を日本版CNCの財源の一部とすることを検討する件については、映連が

「興行収入や他メディアの利益からのトップオフ、関係省庁の映画支援振興予算の一元化や基金の運用についても検討を重ねましたが、それぞれに諸々の高いハードルがあり、軽々には実現が難しいのではないかとの共通認識があったものと理解しています」

と否定的な見解を示したことに対し

「今回の私たちの提言と質問において肝要な問いかけである『興行収入を財源の一部とする』ことについては、その困難さが再確認されたのみで、踏み込んだ回答はありませんでした。この点に関しては、お互いにこの構想の一丁目一番地であるとの認識を共有している財源問題について具体的な解答、副案を頂けなかったことに失望を禁じ得ません」

と失望感をあらわにした。

その上で

「回答書は、同連盟の新しい体制のもとで『検討会を継続することで、諸々の課題の解決に向けてさらに議論を積み重ねていければ』と結ばれており、わたしたちとしても『日本版CNC』実現に向けて、同連盟並びに関連する諸機関とともにさらに踏み込んだ議論をおこなっていきたいと思います」

と結論づけた。

日本版CNC設立を求める会は運営メンバーに是枝裕和(60)、諏訪敦彦(62)、内山拓也(30)、岨手由貴子(39)、西川美和(48)、深田晃司(42)、舩橋淳(47)の各監督が名を連ね、約2年前から話を進めてきた。今年6月14日に都内で開いた会見では、日本版CNCの設立の意義を説明。フランスの映画行政を管轄する国立映画映像センター(CNC)、韓国の韓国映画振興委員会(KOFIC)など、海外の映画界に存在する映画の充実した共助制度に接し、同様のシステムの必要性を感じ、映画を守るために日本映画界が連携して新たな仕組みを作ることを目指すとした。

具体的には、業界内を横断的に統括し、支援金を分配する、映画業界が「共助」するための支援基金を立ち上げることを目指すと強調。

<1>教育支援

<2>労働環境保全

<3>製作支援

<4>流通支援

を支援の柱とした上で、CNC同様、劇場からの興収と放送、配信事業者からの徴収を財源と考えていると説明した。

同会は、映連とも21年から話し合いを続けてきた。ただ是枝監督は6月の会見で、財源として想定している劇場からの興収と放送、配信事業者からの徴収については「映連を敵に回したいわけじゃないですが、動かない。絶対不可能だと言われ、映連と1年、話をしても動かない。映連の中でも考えを共有できている人もいるが(財源の扉は)開いていない」と現状を説明。「業界全体が1枚岩になって、初めて公的な連関に向かうべき。お金を出してもらうと口を出す、というところの意識改革をし、どう巻き込んでいくか。文化庁、経産省の垣根をどう取っ払い、合流させていくかが、その先に必要」と強調していた。

今年2月24日には、映連の島谷能成会長(東宝)に提言書「日本版CNC(仮称)発足に向けて~映画界の共助システムの構築~」を提出。そのこと受けて、映連が事務局で「日本版CNC/KOFIC研究会」を開催し、継続的な意見交換の場を提供したことに一定の評価を示した。

一方で「その後1年4カ月にわたり研究会での議論、検討を通じて提案を行ってきましたが、貴会からこの財源の問題に関して解決に向けた具体的な打開策はいまだ得られておりません。また、非公式な『研究会』という性質上、ここでの議論の成果が貴会の事業や意思決定にどのように関与するのかも定かではありません」と具体的な動きが見えないことに疑問を呈した。そのことが、8月に映連に提案書兼質問書を提出することに〓(繋の車の下に凵)がった。

是枝監督は26日午後、ツイッターを更新。

「映画製作者連盟から、質問状に対する解答が届きました。映画界が抱えるさまざまな課題の克服に向けて、道は険しいですが、諦めずに取り組んでいこうと決意を新たにしております」

と、日本版CNC設立を求める会の今後の活動に向けて、改めて強い決意を示した。