田中裕子(67)が8日、東京・テアトル新宿で行われた2年ぶりの主演映画「千夜、一夜」(久保田直監督)公開記念舞台あいさつに登壇。撮影が行われた新潟県佐渡島で、特別天然記念物のトキを発見、目撃した喜びを語った。

田中は、撮影の際の思い出を聞かれると「2つくらいあって」と切り出した。「1つは、車で撮影が終わって帰ってきたら道の野っ原で虫を取っているのか、何かしている女の子がいた。よく見たら、真千子ちゃんでした」と、共演の尾野真千子(40)が野原で何かしていたと明かした。尾野は「花を摘んでいた乙女でした」と説明した。

田中は続いて「もう1つは、泊まっている宿の窓から、夕方になると大きな鳥が何羽か連れだって、山に帰っていくのを見ていて。あれは、トキじゃないか? と思って。撮影が休みの時、見つけに出掛けました」と、トキとみられる鳥を探しに行った思い出を語り出した。その上で「でも、なかなか見つからず、ダメかなぁと思った帰り道で、田んぼに6羽いて。あぁ…あれはトキじゃないかなと思って近づくと、パーッと逃げる。その羽の裏側が、ちゃんとオレンジピンク…あぁ、これはトキだと思って。野生で、生きていられるようになったんだなぁと思って。それが見られたのは、とてもうれしかったです」と感慨深げに振り返った。

「千夜、一夜」は、ドキュメンタリー出身の久保田直監督が、劇映画長編デビュー作となった14年「家路」から8年を経て作り上げた作品。日本では年間約8万人が人知れず消え、そして今もどこかで誰かを待ち続ける人がいる。そこにはいったいどんな物語が隠されているのか…日本全国の警察に届けられる行方不明者の「失踪者リスト」と、その事象に興味を持ち「家路」以来、2作目のタッグとなった脚本家・青木研次氏が脚本を手掛けたオリジナル作品。

登美子(田中)の夫の諭が突然姿を消してから30年の時がたった。なぜいなくなったのか、生きているのかどうかも分からない。漁師の春男(ダンカン)に思いを寄せられても、愛する夫とのささやかな思い出を抱きしめながら、登美子は夫の帰りをずっと待っている。そこに、2年前に失踪した夫を探す奈美(尾野真千子)が現れる。奈美は、自分が前に進むために、夫が「いなくなった理由」を探し「悲しくないですか?待ってるのって」と問いかける。登美子は「帰ってこない理由なんかないと思ってたけど、帰ってくる理由もないのかもしれない」と返す。しばらくして、奈美は新しい恋人ができたため夫・洋司(安藤政信)と離婚したいという。そんなある日、登美子は街中で偶然、洋司を見かける。

田中には、05年の映画「いつか読書する日」「家路」、16年のWOWOWのドラマ「この街の命に」以来4度目のタッグとなる、青木氏が自身を当て書きしたという脚本についての間奏を問う質問も飛んだ。田中は「青木さんとは『いつか読書する日』で初めて一緒に撮らせてもらって。それから何本か撮りまして、今回に至ります。セリフは、そんなに多くないと思うんですけども、セリフとセリフの間に、いろいろなことが感じられるというか」と青木氏の脚本について説明。その上で「(セリフとセリフの間の)風のようなものを皆さんに一番、伝えたいな…伝えなきゃいけないなと思うんですが…それが難しくて。今までも、なかなか出来なかったと思うし、今回も出来なかったかなって思っています」と語り、口元に笑みを浮かべた。