20年に米ミネソタ州ミネアポリスで白人警察官に首を膝で押さえつけられて殺害された黒人男性ジョージ・フロイドさんの遺族が18日、米ラッパーのイェことカニエ・ウェスト(45)から精神的苦痛を与えられたとして名誉毀損(きそん)で2億5000万ドルの損害賠償を求める訴えを起こしたことが分かった。

SNSで反ユダヤ主義的発言を連投して物議を醸しているウェストは、出演したポッドキャストの番組でフロイドさんの死は警察官の違法行為によるものではなく「フェンタニル(麻酔や鎮痛などの目的で利用される合成オピオイド)の過剰摂取によるものだ」などと発言。ビデオでは警察官の膝は首にはあたっていないと主張して物議を醸していた。

8分46秒にわたって首を押さえつけられて亡くなったフロイドさんの事件をきっかけに、「黒人の命は大切だ」と訴える人種差別撲滅運動ブラック・ライブズ・マターが全米を席巻し、その後世界各地へと広がりを見せていた。フロイドさんを殺害した罪に問われていた3人の元警察官は昨年、有罪判決を受けている。

米ロサンゼルス・タイムズ紙によると、原告はフロイドさんが亡くなった当時6歳だった娘ジアンナちゃんの母親で、「ハラスメントや不正流用、名誉毀損、精神的苦痛」を理由にウェストとビジネスパートナーらを訴えたという。代理人の弁護士は、「フロイドさんの命を軽視したもので、非人道的な死から利益を得ようとする不快な試み」だと非難している。

ウェストは、フロイドさんが亡くなった当時、幼くして父親を失ったジアンナちゃんが将来大学に行く際の費用を支援すると表明。ジアンナちゃんやフロイドさんと同じく警察官に殺害されたブリオナ・テイラーさんら被害者遺族の支援に200万ドルを寄付したことが伝えられていた。

SNSでの投稿を受けてツイッターやインスタグラムのアカウントを凍結されたウェストは、「言論の自由」をうたう米保守派に人気のSNS「パーラー」を買収することで基本合意したことが明らかになったばかり。(ロサンゼルス=千歳香奈子)