ギャラクシー賞1月度月間賞を受賞したTBS系「不夜城はなぜ回る」(月曜深夜11時56分)が今、アツい。「不夜城-」は入社5年目の大前プジョルジョ健太ディレクター(27、以降プジョルジョD)が企画の立案者で、番組にも出演する。深夜にこうこうと光る建物-不夜城-に自ら突入し、何が行われているのかを体当たりで調査をする。昨年3月から3度の特番を経て、同秋レギュラー化。大人な世界をにおわせるタイトルをいい意味で裏切り続けるヒューマンドラマに、毎度心が温まることで注目を集めている。

筆者は昨年10月末まで紙面制作の部署に勤務しており、終業時間のほとんどが深夜だった。活動時間が深夜に限定されがちだったため、都内でもめっきり数が減ってしまった深夜2時まで営業する貴重な一般銭湯を愛用している。500円の入浴料に300円のサウナ料金を加算し、「ととのう」のが、ささやかなリラックス方法。その“プチ不夜城銭湯”のサウナ内のテレビで「不夜城-」に出会った。

通常のサウナルーティンでは、サウナ(6分+10分+12分)→水風呂→外気浴を3回転させるが、月曜深夜はこのスタイルを崩す。サウナ内にもうもうと立ち上がる熱気との我慢比べからスタート。テレビ画面の中では、プジョルジョDが夜通し頑張る人たちに対し淡々と取材を続けている。

噴き出す汗が限界になると、番組を中座するタイミングを見計らって、サウナから一瞬だけ出る。火照った体を水風呂で冷やし、外気浴を省いて再びサウナにインする。それをひたすら繰り返し、45分2本立てのうち、1本分はサウナで見る。サウナから出て水風呂も終わり、外気浴でクールダウンしながら、ふと考える。「不夜城-」がなぜ、自分にとって面白いと思ったのか。「ととのった」頭で分析してみた。

まずは“不夜城”に従事する市井の人々に、鉱脈があると判断したプジョルジョDの着眼点。この人たちには「深夜」じゃなきゃいけない理由がある。「朝」でもなく「昼」でもなく「夕方」でもなく「深夜」。そこを深堀りしていくと、ストーリーが生まれるという切り口が他にはない。

また、プジョルジョDの取材力が毎回、いかんなく発揮されている。20日深夜の放送では、岐阜・朝日町にある秋神温泉の「氷点下の森」に突撃。標高が1000メートル以上もある雪深い場所で、「氷の守人(もりと)」と名乗る59歳の主人を直撃取材している。水を凍らせてつくった複数のつららを午後9時まで宿泊客のためにライトアップ。その後、深夜まで主人1人が氷やつららを管理しているという。

素朴なプジョルジョDが主人と人間関係を築き、ストーリーを徐々に深堀りしていく。約30年前に「氷点下の森」を一からつくった父が6年前に亡くなり「頼む」と託された話や、25年前に離婚した嫁と3人の子どもたちの関係性などが明らかになっていく。まさに「人に歴史あり」を地で行くドキュメンタリー番組に仕上がっている。

プジョルジョDはギャラクシー賞1月度月間賞を受賞に際し「夜中に辛くて目をつぶりたくなる時、これまでに出会った夜通し頑張る人たちの顔が浮かびます。『まだ終われない! まだ頑張れる!』と自分の背中を押してくれます」とコメント。さらに「視聴者の皆さまもしんどい時があると思います。そんな時、暗い夜空のもと、同じように頑張る人たちがいることを思い出していただけるとうれしいです。『今日もどこかで不夜城は回っている』」と続けている。

プジョルジョDが持ち合わせている「物事の切り口」と、「取材対象者の胸襟を開かせる取材力」は当然、新聞記者にも必要な資質。毎週月曜日は、アッツアツの深夜サウナで「不夜城-」を見て、取材活動のヒントにしていきたいと思う。【高橋洋平】

◆大前プジョルジョ健太(おおまえ・ぷじょるじょ・けんた)1995年(平7)4月11日、大阪府大阪市生まれ。18年、法政大学社会学部社会学科卒業後、TBS入社。「あさチャン!」など朝の情報番組を1年間担当。報道局経済部に1年担当後、22年春まで「ラヴィット!」「サンデー・ジャポン」などの情報バラエティーを担当。