米映画「ザ・ホエール」(ダーレン・アロノフスキー監督、7日公開)で、米アカデミー賞主演男優賞でオスカーを獲得した、米俳優ブレンダン・フレイザー(54)が来日し、6日、都内で会見を開いた。2008年(平20)8月に「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」のプロモーションで、同じく今回のアカデミー賞主演女優賞でオスカーを獲得した、マレーシア人の女優ミシェル・ヨーと来日して以来15年ぶりの来日となった。
フレイザーは「ハムナプトラ」シリーズで一躍、ハリウッドのトップスターとなったが、99年から08年まで続いた同シリーズでの、激しいアクションシーンの撮影で脊椎、膝、声帯などの手術を繰り返した。さらに07年には結婚生活が破綻し、母も亡くなるなどして、うつ状態となり、ハリウッドの表舞台から一時、姿を消した。18年には米誌「GQ」の取材に、03年にプレゼンターを務めたゴールデン・グローブ賞授賞式のパーティーでハラスメントを受けたことも、その一因だったと明かし、話題となった。今回のオスカー獲得は、米国を中心に世界で、劇的な復活と報じられている。
また、フレイザー自身、この日の会見の中で「コロナの中で、ユニークな形で撮った。小さな作品ながら感染対策を万全にした」と語ったように、映画製作をはじめ社会構造も、コロナ禍以降、世界規模で変容と転換を余儀なくされている。「19年から20年に製作された映画は、特別だと思う。毒に対する薬として作られた映画だと思う」とも語り、映画が人々の心の救い、力になるとも訴えた。
質疑応答の中で、自身が歩んできた復活の人生や「ザ・ホエール」で演じた、困難を乗り越える主人公の姿を通し、日本のファン、観客に何を伝えたいか? と質問が出た。フレイザーは「僕からは、勇気を持って欲しいと伝えたい。勇気を持つということは、壁がそびえ立っていることを、認識することだと思う」と語った。そして、自身の紆余(うよ)曲折を経ての復活人生も重ねたのか「ヒーローは、必ずしも剣や盾、ヘルメットをかぶっているものじゃない。私たち人間がなるべきヒーローは、乗り越える壁があることを認識する人。少しずつ、力強くいけるものと考えている」と続けた。
フレイザーが「ザ・ホエール」で演じたチャーリーは、体重272キロで歩行器なしでは移動もままならず、自宅の部屋から大学のオンライン講座で指導し、生計を立てているが、余命いくばくもないと悟ると、別れていた17歳の娘エリーとの関係修復に挑む。その役どころ、物語を踏まえ「ヒーローというものは、最も、そこにヒーローがいると思わないところから、生まれてくるものだと思うんですよね。チャーリーも、その1人じゃないでしょうか」と、かみしめるように語った。
フレーザーは、人生に壁があることを自覚し、乗り越えていく強さを持ち、1歩1歩、歩むことの大事さと、どん底にいる人が前を向いて歩いて行くためのヒントが「ザ・ホエール」には詰まっていることを強調した。



