是枝裕和監督(60)の最新作「怪物」(6月2日公開)が、世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス、5月16日開幕)で最高賞パルムドールを争う、コンペティション部門の出品されることが決まった。13日、同映画祭事務局が発表した。

22年の前回、初めて挑戦した韓国映画「ベイビー・ブローカー」も同部門に出品されており、2年連続でのコンペ部門出品となる。邦画としての出品は、パルムドールを受賞した18年「万引き家族」以来で、同作でも主演した安藤サクラ(37)を筆頭に、2度目の頂点取りを狙う。

是枝監督は「韓国映画ではありますが昨年も参加していてさすがに2年続けてはハードルが高いですよとスタッフには話していました。にもかかわらず、公開日が映画祭直後に決定してしまったので少々焦りました。ですから、コンペに決まったと連絡を頂いた時にはうれしいというよりはホッとしたという気持ちのほうが強かったです」と2年連続となるコンペ部門出品が決まった感動を語った。

「怪物」は、是枝監督(60)が17年のTBS系ドラマ「カルテット」、21年の映画「花束みたいな恋をした」などで知られる、脚本家の坂元裕二氏(55)と初タッグを組み、日本映画としては3作ぶりに手がけた新作だ。大きな湖のある郊外の町で起きた、よくある子供同士のケンカに見えたものが、息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち主張が食い違い、主次第に社会やメディアを巻き込み、大ごとになっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然(こつぜん)と姿を消す物語。

是枝監督は「映画はスタッフとキャストの一期一会の短い出会いと別れの間に生命を授かります。その産声を初めて観客の皆さんに聴いていただく場所としてカンヌ映画祭は、やはり、最高の舞台だと思っています。またあの場所に連れて行ってくれる『怪物』と、その関係者の皆さまに心から感謝します。今回は残念ながら参加がかなわないスタッフ、キャストの皆さんの思いも、出来るだけ沢山胸に抱いてあの特別な場所を一緒に歩きたいと思います」と抱負を買った。

各俳優陣も、コメントを発表した。

安藤サクラ(シングルマザー麦野早織役) 是枝監督カンヌ国際映画祭出品おめでとうございます。こんなにも早くあの場所に戻れるとは思ってもいませんでした。また是枝組の一員としてみなさんと映画祭に参加できること、とてもとてもうれしいです。カンヌは幼い頃から憧れていた遠い遠い遠い憧れの地。なので今はまだ気持ちがふわふわしていて、少しおなかが痛いくらいです。でも、行けるとなれば目いっぱい楽しみます! いってきます!!

永山瑛太(40=担任教師の保利道敏役) 是枝監督、坂元裕二さん、坂本龍一さん、素晴らしいキャスト、スタッフの皆さんの座組に、私が携われたこと、改めて幸せをかみしめてます。感謝と希望を忘れず、日々、役者としてまい進していきたいと思います。

黒川想矢(13=沙織の息子・湊役) 僕は最初、どんな演技をしようとか、上手に演じたい! とか自分の事ばかり考えていました。是枝監督の演出からは、どうやって芝居をするのかではなく、ただ湊として動けばいいということが感じ取られ、ふに落ちた気がしました。また、僕が表現に悩んでいる時に瑛太さんから「俳優は監督の脳みそにあるものを表現するもの」というアドバイスをいただき、俳優としての心構えが一変しました。途中、湊が抜けない…というような感覚になり苦しい時もありましたが、現場の皆さんが温かく包み込んでくださって、なんとか撮影を乗り越える事ができました。是枝監督とみんなで作り上げた作品を、カンヌ国際映画祭で世界中の方々に見てもらえることが、とても楽しみです。

柊木陽太(11=星川依里役) 僕が初めて出演した映画「怪物」がカンヌ国際映画祭にノミネートされて、とてもうれしいです。撮影はとても楽しかったです。大変なこともありましたが皆さんのおかげで最後までやり切ることができました。そして、素晴らしい共演者のみなさんや、スタッフさん、そしてこの作品に関わらさせていただいたことにとても感謝しています。初めて海外に行くのですが、是枝監督や共演者のみなさんと一緒に行くのが本当に楽しみです! そして世界中の人に作品を見てもらえると思うと今からワクワクしています。

永山がコメントしたように「怪物」の音楽は、がんで闘病していた中、3月28日に71歳で亡くなった音楽家・坂本龍一さんが担当した。「残念ながらスコア全体をお引き受けする体力はなかった」(坂本)ため、全曲の制作ができず、書き下ろしはピアノ曲2曲にとどまった。そのため、71歳の誕生日を迎えた1月17日にリリースした、約6年ぶりのオリジナルアルバム「12(トゥエルブ)」の収録曲や過去の楽曲も使い、映画全体の音楽を構成した。

◆是枝裕和(これえだ・ひろかず)1962年(昭37)6月6日、東京都生まれ。早大卒業後、テレビマンユニオンに参加。14年に独立し制作者集団「分福」を立ち上げる。95年に「幻の光」で監督デビュー。04年「誰も知らない」、13年「そして父になる」、15年「海街diary」などを経て、18年「万引き家族」でカンヌ映画祭で最高賞のパルムドールを受賞。

◆坂元裕二(さかもと・ゆうじ)1967年(昭42)5月12日、大阪府生まれ。19歳で第1回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞しデビュー。同系の07年「わたしたちの教科書」で第26回向田邦子賞、11年「それでも、生きてゆく」で芸術選奨新人賞、13年「最高の離婚」で日本民間放送連盟賞最優秀賞。日本テレビ系の10年「Mother」で第19回橋田賞、14年「Woman」で日本民間放送連盟賞最優秀賞。TBS系の17年「カルテット」で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。近年の作品には21年のフジテレビ系「大豆田とわ子と三人の元夫」、22年の日本テレビ系「初恋の悪魔」など。16年から東京藝術大大学院映像研究科映画表現技術脚本領域教授。