今年3月28日に亡くなった坂本龍一さんの最晩年までの活動をまとめた自伝「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」(新潮社)が、19日(全国発売は21日)から首都圏の書店で販売開始された。
著者本人の手による「あとがき」は、残念ながらかなわなかったものの、口述筆記の聞き手を務めていた鈴木正文氏が巻末に「著者に代わってのあとがき」を寄せている。坂本さんの遺族からは、生前の坂本さんがパソコンやiPhoneでつけていたという日記の一部がプリントアウトして手渡されたという。
20時間にわたる大手術を受けたあとの21年5月12日には「かつては、人が生まれると周りの人は笑い、人が死ぬと周りの人は泣いたものだ。未来にはますます命と存在が軽んじられるだろう。命はますます操作の対象となろう。そんな世界を見ずに死ぬのは幸せなことだ」。イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)時代からの盟友高橋幸宏さんが亡くなって1カ月ほどたった今年2月18日には「NHKの幸宏の録画見る/ちぇ、Rydeenが悲しい曲に聴こえちゃうじゃないかよ!」とつづられていたという。
鈴木氏による原稿では、貴重な資料も交えつつ、口述筆記のプロジェクトが終わり、今年を迎えてからの坂本氏の最期の日々のことが初めて明かされている。鈴木氏は「坂本龍一さんが最後の日々に書きつけたことばや思想の断片をとどめる『日記』のうち、2022年9月23日のものには、『ぼくは古書がないと生きていけない/そしてガードレールが好きだ』との記述があります。『あとがき』では、そのまま紹介し、コメント類は付加しませんでしたが、『古書がないと生きていけない』という吐露につづいて、『ガードレールが好きだ』という告白があったのには、虚をつかれました。それからというもの、僕はガードレールを見るたび、坂本さんのこのことばを呼び戻しては、路傍にうずくまるものいわぬかれらに、坂本さんに代わって(というつもりで)、語りかけます。照る日曇る日、黙して僕たちを護ってくれてありがとう、ガードレールさん、と。」とコメントしている。
同書は多数の海外版元からも翻訳出版のオファーがあるといい、中国の中信出版、韓国のWISDOM HOUSE、台湾の麦田出版からも、日本版と同じく「自然に還っていくピアノ」の写真を用いた装丁で同時刊行される。



