製作会見で気になっていた舞台「醉いどれ天使」を観劇してきた。取材ではなく、あくまでも観劇だ。結論からいうと、期待以上だったので、ここで紹介しようと思う。
同作は、おじさん記者も生まれるはるか前の昭和23年に公開された、黒沢明監督による同名映画が原作。戦後の闇市を仕切る若いやくざ松永と、反骨漢で酒好きな貧乏医者真田のぶつかり合いを通じ、戦後風俗を描いたヒューマニズム作品だ。また、黒沢監督と三船敏郎さんが初タッグを組んだ作品でもある。
21年にも松永を桐谷健太(45)、真田を高橋克典(60)で舞台化されているが、恥ずかしながら当時、知らなかった。
今回、松永を北山宏光(40)、真田を渡辺大(41)が演じたが、最も興味を引いたのは、演出を深作健太氏が務めるということ。言わずと知れた深作欣二監督のご子息だ。黒沢作品の演出を深作監督のご子息が手がける。これだけで興味を引くには十分だった。
おじさん記者は原作映画も、21年の舞台も見ていないので比較はできない。だが、黒沢作品の特徴でもある重厚なヒューマニズムを崩すことなく、随所に“深作イズム”をちりばめ、さらに現代的要素も盛り込んだ、令和版エンタメ作品に昇華していると感じた。
北山が演じた松永は、義に厚くもどこか哀愁漂う昭和の漢。渡辺が演じた真田は、反骨漢ながらも人間臭く憎めない昭和の漢。共にはまり役だろう。
また、良い味を出していたのが奈々江役の元乃木坂46阪口珠美(24)だ。元アイドルのフィルターがかかっていたかもしれないが、アイドルとは正反対の“嫌な女”を見事に演じ切っていた。“嫌な女”としたが、おそらく時代背景的には、そうせざるを得ない処世術だったはずだ。その辺もしっかり演じていたように感じた。
大鶴義丹(57)演じる旧タイプやくざ岡田の存在も、この舞台の柱の1つになっていたはずだ。
信頼と裏切り、仁義、そして人、故郷への愛情。さまざまな人間模様が凝縮された作品は“見ておいてよかった”作品となった。
なお、ロック好きなおじさん記者にとっては、音響の一部を舞台袖で、実際に演奏しているのも見逃せないポイントだった。それをストーリーの一部に組み込んでいるのも秀逸。ラストシーンではバイオリンの弓でギターを奏でるが、“ジミー・ペイジへのオマージュ”と感じたのはおじさん記者だけではないはず。って、これもネタバレかな?【川田和博】



