俳優黒川想矢(16)が「第38回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」で、石原裕次郎新人賞に輝いた。「国宝」(李相日監督)で主人公の少年時代を、「この夏の星を見る」(山元環監督)では等身大の中学生を演じた。最年少受賞、初の満票選出となった。
黒川は「いすから飛び上がるくらい、やったー! とうれしかったです」と言いつつ、「僕でいいのかなと思いました。ものすごくうれしい反面、とても責任を感じました」と謙虚に語った。
裕次郎さんのことは、事務所を率いる舘ひろし(75)からよく話を聞いているそう。「立っているだけでスクリーンを支える力がある、と教えてくれます。映画を拝見すると本当にオーラを感じます。裕次郎さんのように優しくて強くて大きい人になれるよう、頑張っていきたいです」と話した。もちろん舘にも報告済みで「すごいなあ! と喜んでくれました」。
「国宝」では、任侠(にんきょう)の一家に生まれ歌舞伎の才能を花開かせる主人公、立花喜久雄の少年時代を演じた。李監督によるワークショップ形式のオーディションに5回ほど参加したという。ただ「僕は歌舞伎について本当に何も知らなかったですし、日本の大切な伝統文化を伝えるとことも怖かった」という思いが強かったことも明かした。
オーディションを振り返る。「3回目くらいの時に監督に、今日どうだった? と聞かれたのですが、正直に『来ることを迷っていました』と言いました。僕は基本的に弱い人間なので、喜久雄のように強い人間を演じられるのかなという気持ちや稽古に耐えられるのかという不安もありました」と振り返った。正直に話したことで「落ちたかな」と思ったという。しかし、結果的に、喜久雄役を射止め、学びの多いオーディションとなった。
歌舞伎も好きになった。黒川は「小学校の時、授業で映像を見た時は寝てしまったことがあったんですが、実際に劇場で見てみると本当におもしろくて、もっと早く知りたかったと思いました」と話した。
ただ、日本舞踊には相当苦戦したという。「独特のテンポ感と、足の使い方がすごく難しかったです。ある時、稽古してくれていた先生がさじを投げて帰ってしまったことがあったんです。自分としては最大限一生懸命やっているつもりだったんですけど…」と話した。先生なりにハッパをかけた、とも考えられる。より一生懸命稽古に打ち込み、自主練も積み重ね「体に染み付いていくと無心になれるんです。演技をしている感覚と似ている感じが楽しかった」と話すまでになった。
作品冒頭、宴会の余興として演じられる「積恋雪関扉」。黒川演じる喜久雄は傾城(けいせい)の墨染をつとめる。舞台に登場した姿に、後に師匠となる花井半二郎(渡辺謙)が目を奪われるように、観客もくぎ付けになった。黒川は「友達に、最初に出ていた子は女の子だと思ったと言われました。気付かなかったと言われて、すごくうれしかったんです。役として黒川想矢を感じなかったということ。本当にうれしかったです」と話した。
撮影で一緒になることがなかった吉沢亮とは、宣伝活動などで交流を深めた。「『自分の言葉で話そうとする姿勢が好きだな』と言ってくださいました。語彙(ごい)力がなくて、うまく言葉にできない感覚がずっとあったんですが、それでもいいんだよと言ってもらえたようで、すごくうれしかったです」。
天体観測でつながった中高生を描いた「この夏の星を見る」では等身大の少年を演じ、幅広い演技ができることを見せた。「自分に近いからこそ、演じるのが難しいこともあった。どうしてこの子はこういうせりふを言うんだろうと考えてしまった」と話す。演じることの奥深さを知った撮影にもなった。
23年、是枝裕和監督の「怪物」ではカンヌ映画祭にも参加し、注目された。注目がその後のプレッシャーになることもあったのでは、と聞くと「プレッシャーとは感じたことはないです。演技ができることが幸せ、という気持ちの方が大きいんです」とまっすぐに語った。【小林千穂】
◆黒川想矢(くろかわ・そうや)2009年(平21)12月5日、埼玉県生まれ。5歳からCMなどに出演。21年にNHKBSプレミアム「剣樹抄~光圀公と俺~」で舘ひろしとの共演がきっかけで舘プロ入り。23年「怪物」で映画デビュー、ブルーリボン賞新人賞など。ほか映画は「BISHU~世界でいちばん優しい服~」「【推しの子】-The Final Act-」などに出演。特技はキックボクシング。趣味は写真。



