河瀨直美監督(56)の新作映画「たしかにあった幻」(2月6日公開)完成披露上映会が22日、東京・テアトル新宿で行われた。
劇中で、心臓移植を待つ少年のドナーとなる、脳死した少年の父親を演じた永瀬正敏(59)が、自身の3歳下の弟も「今、生きていたらおっさんだった弟を、15、16で亡くして…心臓の病気だったので」と明かした。
「たしかにあった幻」は、小児臓器移植実施施設が物語の舞台。フランスからやってきたレシピエント移植コーディネーターのコリーが、脳死ドナーの家族や臓器提供を待つ少年少女とその家族と関わりながら、命の尊さと向き合う。同時に突然、失踪した恋人の迅の行方を追う姿を通して愛と喪失、希望を描く。
永瀬はフリップトークで「想い」と書いた。「先に逝った人たちを忘れちゃうんだろうと思うんだけど、全然、忘れないなと、想いは消えないなと」と語った。その上で「今、生きていたら、おっさんだった弟を15、16で亡くして…心臓の病気だったので」と。口にした。劇中では突然、脳死状態となった息子が脳死ドナーとなる父の悲しみを、我が身のように好演したが、その裏には自身の体験があった。
永瀬は「(ドナーから心臓を)もらうことがあれば、おっさんになって、そこに座っていたかも知れないけど、ずっと一緒にいる気がする」と語った。さらに「デビュー作の監督も…亡くなって終わるかと思ったら全然」と続けた。デビュー作の監督とは、1983年(昭58)の映画「ションベン・ライダー」を手がけ、01年6月に映画「風花」を公開後、肺がんと告知され同9月に53歳の若さで亡くなった相米慎二監督を指す。
同作は大阪・関西万博テーマ事業プロデューサーなどを務めた河瀬監督にとって、22年の東京五輪公式記録映画「東京2020 SIDE:A、B」以来4年ぶりの新作で、脚本も手がけた。オリジナル脚本による劇映画は、フランスのジュリエット・ビノシュが永瀬正敏とダブル主演した18年「Vision」以来8年ぶり。8月にスイスで開催された、ロカルノ映画祭のインターナショナル・コンペティション部門に選出された。
劇中ではコリーを、ルクセンブルクの俳優ビッキー・クリープス(42)迅を寛一郎(29)が演じた。河瀬監督が世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)で新人監督賞「カメラドール」を受賞した97年の「萌(もえ)の朱雀(すざく)」で抜てきし、主演デビューした尾野真千子(44)が、最愛の息子を失い、1周忌を迎えるも罪悪感にさいなまれるめぐみ、元捜査一課の刑事で現在は弁当屋として過ごす亮二役を北村一輝(56)が演じた。
◆「たしかにあった幻」国際人材交流事業の一環で日本へやってきたフランス人女性コリー(ビッキー・クリープス)は、臓器の移植を必要とする人と関わるレシピエント移植コーディネーターとして、日本で数少ない小児心臓移植実施施設の病院でサポートスタッフとして働き始める。移植を待つ重症の小児を多く受け持つ病院では、限られた人員で必死に日々の業務をこなし、切実な状況にある患者やその家族と向き合っていた。コリーは厳しい環境の中でも、患者の家族をはじめ従事する医師や看護師、コーディネーター、保育士や院内学級の先生らと触れ合ううちに、移植医療をめぐる人々の輪の温かさを再認識していく。そんなある日、屋久島で出会い、心を支えてくれていた恋人の迅(寛一郎)が同居していた家から、何の前触れもなく消えてしまう。



