東京・下北沢にあるトリウッドは、自主製作時代の新海誠監督を発掘した目利きのミニシアターだ。劇団ヨーロッパ企画を主宰する上田誠氏がここを舞台に監督デビュー作を撮った。

劇作家のマドカ(伊藤万理華)は新作舞台で出演者の降板騒動に悩んでいる。バンドマンのカズマ(井之脇海)は仲間の金銭トラブルにいらついている。それぞれ気晴らしにトリウッドを訪れた2人は、スクリーンの中に相手の姿を見る。

どっちが現実でどっちが映画か? 舞台「サマータイムマシン・ブルース」を作・演出した上田氏だから時空を操るのはお手のものだ。スクリーンをはさんで二元中継のように進行する物語は、やがて決壊して折り重なる。一方、互いに解決を祈る悩みごとはともに重大事件に発展して…。

ダブル主演の巧者2人は上田監督のイメージをしっかり体現している。ポカンとした表情から、スクリーンを挟んだ二元世界を受け入れる心境に、いつの間にか感情移入させられる。

「映画」の原点を想起させる仕掛けの中で、演劇人とバンドマンが踊る構図は、シモキタ界隈(かいわい)の人間模様の今も、しっかりと映し出している。【相原斎】

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