フランスで開催中の世界3大映画祭の1つ、第79回カンヌ映画祭授賞式が23日(日本時間24日)開かれた。最高賞パルムドールを競うコンペティション部門に出品された、濱口竜介監督(47)の新作「急に具合が悪くなる」(6月19日公開)に主演のベルギーの俳優ビルジニー・エフィラ(49)とダブル主演した女優・モデル・映画監督のTAOこと岡本多緒(41)が、そろって女優賞を受賞した。日本人俳優の女優賞受賞は、同映画祭79年の歴史で初めて。

エフィラは、16年にフランス国籍を取得し、同国で最も権威があるセザール賞最優秀女優賞を23年に受賞したトップ女優だが、カンヌ映画祭女優賞受賞は初めて。壇上では、涙ながらに「ありがとうございます。そして、感謝と敬意、そして愛をすべて、濱口竜介さんにささげます。映画の終わりに、私も涙を流したことを覚えています。私はこう言いました。【一瞬一瞬が喜びであり、光栄でした】と。この場所に立った多くの方々が、これが【チームの力】によるものだと語っていましたが、まさに私たち全員も同じです」と濱口監督に感謝した。

濱口監督が初の海外での撮影となるフランス・パリで製作した今作に参加したことは、得難い経験だったようだ。「恐らく、私が常に『一体感』を最も強く感じ、竜介が私たちに『冒険』をさせてくれた時間だったのかもしれません。いや『冒険』という言葉では小さすぎます。一生、忘れられない、いや、永遠に心に刻まれる人生経験でした」と熱く語った。

「急に具合が悪くなる」は、がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者の宮野真生子氏と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者の磯野真穂氏が交わした20通の往復書簡を元にした、19年の同名共著(晶文社)を原作に、濱口監督が脚本を執筆。パリ郊外の介護施設の施設長マリー=ルー・フォンテーヌと、がんで闘病中の日本人演出家・森崎真理との交流を描く。マリー=ルーをエフィラ、真理を岡本が演じた。

その内容を踏まえ、エフィラは「この作品が成功している点、私にとって並外れた勇気を感じるのは、相反する2つのことを同時に考えられるところです」と作品を評した。その上で「つまり、状況がいかに絶望的でも、それを変えることを諦めないこと。濱口竜介監督は、常にそこを見つめていました。彼は、私たちの最高の部分を見つめてくれて、その部分がより一層存在感を増していくんです。本当にありがとうございます」と作品の素晴らしさ訴えた。

◆「急に具合が悪くなる」 フランス、パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長マリー=ルー・フォンテーヌ(ビルジニー・エフィラ)は、入居者を人間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされている。そんな中、日本人の演出家・森崎真理(岡本多緒)に出会い、がん闘病中の真理の描く演劇に勇気をもらう。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、交流を始めた2人だったが、ある時、真理が「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、2人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる。