著作権譲渡をめぐる5億円の詐欺罪に問われた音楽プロデューサー小室哲哉被告(50)に対し、大阪地裁は11日、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。杉田宗久裁判長は「曲を詐欺の道具に用いた狡猾(こうかつ)な犯行」と指摘。一方で「被害を完ぺきに弁済して反省している」とした。被害が1億円を超える詐欺事件で執行猶予が付く判決はまれだが、“名物裁判長”の再起への期待が込められた「温情」があった。小室被告は法廷で涙を見せた。
小室被告の指先が震えた。「被告人を懲役3年に処する」。杉田裁判長の声に真っすぐに伸ばしていた両手の指先が動いた。実刑…。一呼吸置き、裁判長が続ける。「刑の執行を5年間猶予する」。実刑回避に小室被告の身体が一瞬、大きく揺れた。
判決言い渡し後、杉田裁判長は「初心に立ち返り、愚直に生きてほしい」と諭すと、小室被告は「はい、分かりました」と何度もうなずき、目にいっぱい涙をためて退廷した。
小室被告は判決後の記者会見で「昨夜は一睡もできなかった。(刑務所の)覚悟はしていた」と明かした。被害が1億円を超える詐欺事件で、猶予が付くケースはまれ。小室被告の詐欺額は5億円、求刑は懲役5年。実刑は回避できないとする見方もあった。
「猶予付き判決」には大阪の“名物裁判長”の温情があったともいえる。一般的に判決の内容は検察側の論告求刑より重くなることはないが、杉田裁判長は過去に「求刑超え」の判決を少なくとも3回出している。法廷で被告に対し「反省しているのか!」と厳しく意見する一方、03年には窃盗罪に問われた2児の母親に猶予判決を出した際、法廷で「もうやったらあかんで、がんばりや」と握手を求めるなど人情派の一面もある。
杉田裁判長は「音楽家としての矜持(きょうじ)をかなぐり捨て、曲を詐欺の道具に用いた狡猾な犯行」と厳しく指摘。一方で兵庫県芦屋市の投資家男性への被害弁済について「被害金5億円に慰謝料1億円と遅延損害金をあわせた約6億4800万円の金を耳をそろえて支払い、被害を完ぺきに弁済した。共犯者からの慰謝料も含めると総額2億5000万円もの法外な慰謝料を受領している」とした。最後に「反省しており、ただちに刑務所に送り込むことに社会的意義を見いだせない」と音楽家として再起への期待を込め、最大のチャンスを与えた。
小室被告は「小室哲哉自身の慢心がすべてを狂わせてしまった。何がなんでも再起しないといけない」と語気を強めた。
[2009年5月12日8時45分
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