6月22日の参院選の公示まで、2週間あまりとなった。今回、主要政党各党では女性候補の擁立が、これまで以上に意識されながら進んだ。自民党は5月末、比例代表に女性候補を4人追加したことを、茂木敏充幹事長が記者会見で発表。自民は比例での女性候補の割合は30・3%で比例全体のほぼ3割となったが、全体では23%あまりにとどまっている。

日本の女性国会議員の数は、いわゆる「世界標準」より相当少ないことがたびたび指摘され、衆院では1割弱、参院でも2割。女性候補の積極擁立は、そういった現実の是正や女性活躍の一環というアピールの手段に使われている気も、しなくはない。それでも女性議員の数が国会で増えれば、男性目線では気づかない政策に声が反映される機会につながるかもしれない。

野党では女性候補擁立が与党より積極的で、立憲民主党は全体の46・5%、共産は半数を超え、51・9%となった。

従来、男性議員が多いイメージで「マッチョ」な政党といわれることもある日本維新の会も、今回、候補者全体の34・1%が女性の候補になった。5月30日、都内で開かれたある会合に出席した藤田文武幹事長は「女性がまだ少ないという声は受けとめないといけない。マッチョな、男性色の強い政党といわれるが、選挙を重ねることで女性の活躍を生かせる、懐の深い政党になっていきたい」とあいさつした。

この会合は、日本維新の会の石井苗子(みつこ)参院議員が書いた「来たれ、女の政治~さらば、男の政治~」という著書の出版記念会。石井さんは2016年の参院選比例代表に、当時の「おおさか維新の会」から出馬し初当選、今回は再選を目指して出馬を予定する。

維新は、地方では女性議員の数も増えているが、国会では全所属議員56人のうち、衆院4人、参院3人の計7人。石井氏が初当選した16年当時のおおさか維新は所属の衆参21人が全員男性で、女性はいなかった。この時の参院選では石井さん含め、2人の女性参院議員が誕生。石井さんは、今の維新女性国会議員の「パイオニア」的存在でもある。

同時通訳や「CBSドキュメント」の初代キャスターを務め、女優として映画「あげまん」に出演する一方、難病だった妹のケアのために43歳で聖路加看護大に学士入学し看護師や保健師の資格を取り、その後東大大学院で保健学の博士号を取得した異色の経歴でも知られる。女性の国会議員を増やすため、党を代表して発言する機会も多い。

そんな石井さんに、今回の女性候補積極擁立について聞いてみた。維新については「結果的に、ほかの政党と遜色ないくらいの数を出しているということですが、候補者を出せたという結果であり、勝てるかどうかはこの先の話。(勝ち上がるのは)なかなか大変な話だと思います」と、冷静に受けとめていた。

石井さんは、今回の維新の比例候補で、唯一の女性現職。議席を守りたい使命感、女性候補の先頭に立つ立場にいるプレッシャーは大きいはずだ。それだけに「開票された時に女性(の当選者)が出てこなかったじゃないかという話になれば、女性を擁立しても成果を出せなかったことになる。擁立すればいいということではない。だから私も必死です」と語った。

「6年間国会にいて、やはり国会には女性議員がちょっと少ないんじゃないかな~」と感じているという石井さん。「女性が増えれば、意思決定までの時間も変わると思う。意思決定が早いのはしがらみがなかったりするから。超党派の女性議員で議連などもやりますが、話は早いし思っていることも同じ。これは貴重です」とも話してくれた。

維新は昨年の衆院選で公示前から30議席増やし、議席を減らした野党第1党立憲民主党とは対照的な躍進を得た。今回は、昨年の快進撃がフロックでなかったことが試される場にもなる。と同時に、「マッチョイメージ」をじわじわ変えるような、石井さんを含めた女性議員がどこまで増えるか、ひそかに注目している人は少なくない。

そんな流れが各党で続いていけば、いつか、女性候補の数に関するニュースが自然に減っていくことにもつながるのかもしれない。【中山知子】