岸田文雄首相(21年11月30日撮影)
岸田文雄首相(21年11月30日撮影)

岸田内閣の閣僚のスキャンダルが収まる気配をみせない。今月召集された臨時国会で初めて本格的な与野党論戦が行われた先週の衆参両院の予算委員会で、スキャンダル抱える閣僚が野党追及の矢面に立たされた。旧統一教会との関係の問題を抱える山際大志朗経済再生相、自身や自身の政治団体が親族に賃貸料を払っていたなど事務所費に関する問題を抱える秋葉賢也復興相、寺田稔総務相が次々と答弁を求められ、防戦一方。「疑惑のドラフト候補がいっぱいいる」(立憲民主党の泉健太代表)という状況に追い込まれている。

岸田内閣では昨年10月4日の発足後、閣僚が任期中に辞任に追い込まれたことはない。閣僚の辞任は内閣にとって体力をそぐもので、政権運営が厳しくなったり過去には退陣に至ったケースもある。そんな中、岸田内閣は「総理の軌道修正力と時の運で乗り切る」(政界関係者)形が続いてきた。第1次内閣(昨年10月4日~11月10日)、第2次内閣(昨年11月10日~今年8月10日)の間、政権を揺るがすような深刻な問題は起きず、大きな失点がないことから内閣支持率も下がらず、「謎の高支持率」(自民党関係者)という珍現象が、政権の体力温存に貢献してきた。

昨年の衆院選での自民党勝利後、新型コロナウイルスの感染拡大が続いたものの、水際対策をはじめ、従来の路線が適切ではないと感じれば、路線変更や軌道修正をいとわず、批判を受ける状況をつくらないよう、岸田首相はしたたかにピンチを乗り越えてきた。堀内詔子元五輪&ワクチン相のように、抜てきされながらも答弁が不安定で辞任が取り沙汰された大臣もいたが、五輪相の任期いっぱいのタイミングで退任させる形で、傷を防いだ。

潮目が変わったのが安倍晋三元首相の銃撃事件だ。旧統一教会と自民党との深い関係が明るみに出て以降、有権者の政権を見る視線も厳しくなった。8月10日に、周囲の観測の裏をかくように時期を1カ月も前倒しして発足させた第2次改造内閣だったが、大臣の問題が次々と浮上した。

山際氏は教会側との深い関係が取りざたされながらも「記憶」にも「記録」にもないとして、マスコミ報道や報道陣の指摘を追認する形で事実認定する、あり得ない作業が続く。秋葉氏や寺田氏も、事務所費問題について連日釈明に追われている。事務所費問題といえばかつて、第1次安倍内閣でも複数の大臣に問題が指摘されて辞任に追い込まれた。結果的に大臣の「ドミノ辞任」が続き、政権の体力をそいで第1次安倍内閣退陣の要因になった案件だ。

山際大志郎経済再生相(2021年10月5日撮影)
山際大志郎経済再生相(2021年10月5日撮影)

今のところ、そんな問題を抱えた大臣たちの進退問題には発展していないが、ここにきて、岸田内閣の支持率は急降下。中には「危険水域」といわれる支持率30%を割り込んだ調査もある中、山際氏に関しては辞任を求める声も多い。閣僚の辞任という事態を防いできた首相にとっては、大ピンチ。また、自身の戦略にも狂いが生じてきている。

これまではピンチを乗り切る手段だった「軌道修正」路線が、「迷走」「一変」「朝令暮改」と批判される事態が起きた。宗教法人への解散命令請求の要件に関する答弁を、野党の批判を受けた後、1日で180度変えた(民放の不法行為は該当しない→該当する)ため。首相は答弁を変更したことについて、10月19、20両日の参院予算委員会で「改めて政府としての考え方を整理した」「けして不適切なことではない」と反論したが、首相側近の木原誠二官房副長官がインターネット番組で「(答弁するに当たっての)準備不足」を認めざるを得なかった。これまであまり見せなかったようなちぐはぐさだった。

閣僚の問題だけでなく、自身の発言でも失点を重ねる形になった岸田首相。ただ、自分自身の問題は強引な「軌道修正」で乗り切れても、大臣たちのスキャンダルは軌道修正では乗り切れない事案ばかりだ。「提案型」から「対決型」に戻った立憲民主党をはじめ、野党も勢いづいている。岸田首相は明日10月24日も衆参両院の予算委員会で質疑に応じるが、12月まで続く臨時国会ではこの後も野党との質疑が予定される。問題を抱える大臣を抱えたままで、どこまで政権の体力を維持できるのだろうか。【中山知子】