今日8月16日は、一般的にお盆休み最終日。月曜日には社会も本格的に動きだすが、永田町の本格稼働はまだ先だ。例年、多くの国会議員が地元回りに精を出す時期。一方、歴代首相にとってはつかの間の夏休みの期間に当たり、歴代首相の中には、都心のホテルで過ごしたり趣味のゴルフに興じたり、それぞれの過ごし方がみられてきた。
ただ高市早苗首相は、歴代首相のような、まとまった形の「夏休み」を取得している雰囲気はない。自民党関係者によると、当初は、お盆期間を利用して地元奈良に「お国入り」をし、講演などを行う予定もあったという。しかし7月28日に発生した熊本地震の対応に継続して当たる必要が生じ、地元入りそのものが見送りになったという。お盆前には千葉県で大規模な豪雨被害も発生し、政府も「みんながお盆休みをとっているどころではない」(関係者)。公務や所用以外は公邸に滞在せざるを得ない状況になった高市首相。特別国会中は「睡眠不足」アピールに批判が相次いだが、今も「気の抜けない毎日となっているはず」(同)との声も聴いた。
かつて「首相の夏休み」で思い出すのは、小泉純一郎首相が就任した2001年の夏、箱根のホテルに滞在中、当時大学生だった次男の小泉進次郎防衛相とキャッチボールを行う様子を報道陣に披露した。首相就任後初めての夏休みは、久しぶりにまとまった休息の時間の機会。クラシックをはじめ音楽鑑賞が趣味だった小泉氏は、この時、滞在先ホテルに数十枚のCDを持ち込み聴きまくったと聴いた。
通常業務から少し離れることで、英気を養う時間になるのは間違いなく、歴代首相は都心のホテルや避暑地で家族と過ごしたり、自宅や公邸に滞在する場合も、読書の時間にあてるケースもあった。一方、夏休みの期間や内容は、時の首相の置かれた立場にも影響される。第2次政権が長期政権だった安倍晋三元首相は、静養先の別荘を訪れゴルフをするのが恒例だったが、首相に再登板した翌年の2013年の夏休みは地元入りも含めて10日間、2014年には地元入りも含め2週間の休みを取った。社会情勢や国際情勢は今と違うが、安定政権であればあるほど、夏の休息期間も長かった。
最近は総じて、首相が長期の夏休みを取る傾向にはない。新型コロナ禍に首相を務めた菅義偉氏は、西日本の大雨被害への対応も重なり夏休みらしい休みを取ることができなかった。コロナ対応でそもそも通常の休みが取れない中、その年には東京オリンピック・パラリンピックも行われた。秋に自民党総裁の任期を控えていた菅氏は結局、総裁選をめぐる党内の権力闘争に巻き込まれる形で総裁選不出馬を表明し、その後退陣する流れとなった。
同様に、石破茂前首相は昨年7月の参院選で大敗し、自民党内から退陣要求が出る中、お盆期間は公務を入れない日を数日とっただけ。当時の首相動静によると、国立国会図書館で借りた数冊の本を公邸に持ち込んで過ごしている。退陣圧力にさらされた末、石破氏はお盆休みが終わって1カ月もたたない9月7日に会見し、党総裁辞任を表明するに至った。
首相だけでなく、多くの議員にとって夏休み期間の後にやってくる秋は、「政治の季節」といわれる。内閣改造や自民党役員人事は9月に行われることが多く、それを考えている首相にとって、夏の休み期間は人事案に思いをめぐらせる期間に重なる。高市首相も、9月に行うとされる内閣改造や党役員人事を検討する期間になっているはずだ。
お盆前、永田町では閣僚や自民党役員人事をめぐって、さまざまなうわさや臆測が飛び交っていた。焦点は、党役員人事ではナンバー2の幹事長で、麻生太郎副総裁の義弟でもある鈴木俊一幹事長を交代させるのか、させないのか。小林鷹之政調会長ら他の執行部主要メンバーはどうなるのか。閣僚人事では、昨年の総裁選で戦い内閣に取り込んだ閣僚たちを残すのか、残さないのか。財務省大物官僚出身で、首相の肝いりでもある消費税減税をめぐり「キーマン」でもある片山さつき財務相の去就を推測する関係者の声も聴いた。
内閣改造や党役員人事は、内閣や党の体制強化をねらって行うのが通常だが、衆院選で自民党に「数の力」をもたらした高市首相に、「物言えない」空気が漂う自民党にとっては、力関係で首相の力があまりにも大きすぎて、「今の内閣同様に、『高市カラー優先』の顔ぶれになってしまうのでは、と心配する声もある」という声も耳にした。
高市首相は14日、自身のXに、物価高対策に対する政府の対応が不十分だとする指摘に対し、連続5投稿で反論しながら持論を主張した。会見や取材機会の少なさに比べ、SNSによる発信の多さが指摘されるが、世間の夏休み期間も「発信戦略」は変わらないようだ。「コアな側近以外、首相の真意はほとんどつかめない」(関係者)との声もある高市首相。歴代首相とはちょっと違う夏の過ごし方になっているようにも感じる。【中山知子】


