4月からの新年度も、高速道路にまつわるニュースが多くインターネットをにぎわせた。

日本の大動脈を補完する新東名高速道路では、神奈川県の未開通区間の一部(伊勢原大山IC〜新秦野IC)が4月16日に開通。都心部から丹沢方面へのアクセスが向上し、東名渋滞時のバイパス機能も期待されている。

また、首都高速道路では、上限料金の値上げと深夜割引の新設、現金が使えないETC専用料金所の拡充など、利用者に直結する変化も多く見られた。


新設された「川口ハイウェイオアシス」は明るく広々した印象(筆者撮影)
新設された「川口ハイウェイオアシス」は明るく広々した印象(筆者撮影)

そんな中、利用者にとって明るい話題として、首都高初となるハイウェイオアシスの誕生が挙げられる。東北道と直結する首都高川口線上りに設けられている「川口パーキングエリア」が4月25日、隣接する川口市の公園と一体となって整備され、「川口ハイウェイオアシス」となったのだ。

NEXCO各社に続いて、ついに都市高速道路にもハイウェイオアシスが姿を現したのである。オープンして6日目、大型連休さなかの土曜日に実際に足を運んでみたので、そのもようを簡単にルポしてみたい。

ハイウェイオアシスとは、従来のサービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)に隣接する形で自治体などが公園を整備、両者を一体で運営することで、高速道路の利用者にも地域の住民にも楽しんでもらう、休憩・娯楽施設の呼び名だ。なお、「HWO」と略すことがあるので、ここから先はHWOと表記することにしよう。

HWOは、1990年に北陸道の徳光PAに設置されたのを皮切りに、現在全国で20カ所以上に広がっている。


地元の特産品などを販売するマルシェなどが行われるHWOも多い(筆者撮影)
地元の特産品などを販売するマルシェなどが行われるHWOも多い(筆者撮影)

中でも、愛知県の伊勢湾岸道にある刈谷HWOは、その規模や集客力などで全国的な知名度を誇っている。4月9日に放送され、私も専門家として出演した『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』のSA/PA特集でも、ここは詳しく紹介されていた。


■あえて鉄道でHWOへ行ってみた

さて、青空が広がった4月末、私はクルマではなく鉄道で川口HWOに向かった。

HWOは高速道路からも一般道からもアクセスできるのが特徴で、川口HWOも、PA側の駐車スペースが普通車179台であるのに比べ、一般道から入る公園側の駐車スペースは、普通車332台分もある。

しかも、川口HWOは私の自宅最寄駅から乗り換えなしでたどり着ける埼玉高速鉄道新井宿駅から歩ける距離にある。大型連休中で道路の渋滞があるかもしれないのと、公共交通機関でのアクセスを確認するために、あえて鉄道を利用したのだ。

地下にある新井宿駅のホームから地上に上がると、それほど遠くないところに高速道路の高架が見える。幹線道路沿いにそちらに向かって歩くと10分ほどで首都高の真下に到着。さらに数分歩いて、川口HWOにたどり着くことができた。

市が整備した公園の名称は、正確には赤山歴史自然公園、通称「イイナパーク川口」と呼ばれ、駅の構内の案内でも地上に出てからの標識でも、「イイナパーク」という名称のみで案内されている。川口HWOという表記はまったくないので、HWOの名前しか頭にないと、戸惑うことになりそうだ。


一般道から入る公園側の駐車場。この日はすでに満車だった(筆者撮影)
一般道から入る公園側の駐車場。この日はすでに満車だった(筆者撮影)

着いてみると、一般道から入る駐車場は満車で、順番待ちの列ができていて驚いた。訪れていたクルマを見ていると、川口や大宮など、ほとんどが地元、埼玉県内のナンバーをつけていた。

また、自転車も50台以上が止められており、文字通り近隣の家族連れの「オアシス」になっていることが伝わってくる。一方、高速道路側の駐車場もほぼ満車だったが、こちらは東京や神奈川各地のナンバーをつけたクルマが多く、南関東一円から訪れていることが伺えた。


■子どもでいっぱい!室内の遊び場「ASOBooN」

川口HWOには、PAとしての設備である「レストラン+売店」のある棟と「トイレ+休息コーナー」のある棟の2棟が新しく整備されたほか、レストラン売店棟と向かい合う形で「室内遊具棟」が作られた。これがこのHWOの最大の特徴で、「ASOBooN(アソブーン)」と名付けられた、かなり大きな全天候型の子どもの遊び場である。


室内遊具施設「ASOBooN」の入場口前。多くの人が並んでいた(筆者撮影)
室内遊具施設「ASOBooN」の入場口前。多くの人が並んでいた(筆者撮影)

この日は、入場を待つ親子で長い行列ができていた。入場は、1枠2時間半での3交代制となっていて、最終回の15時の分は12時半の整理券配布と同時に「満員」となり、13時前に「本日分完売」となっていたようだ。ファミリーからの注目度がうかがえる。

このキッズパークの利用は有料で、料金は大人1人+子ども1人で1500円。それより人数が多いと、さらに追加料金がかかる仕組みだ。

施設内には滑り台やボールプールなど大型の遊具が並んでいて、外からガラス越しに見えるために、近づくだけでワクワクする空間となっている。


子どもたちの歓声が響くASOBooNの施設内(筆者撮影)
子どもたちの歓声が響くASOBooNの施設内(筆者撮影)

レストランは、麺類専門店と和洋食店の2つがあった。和洋食のほうは、川口市が鋳物の街として知られるだけあって、川口市特産の羽釜で炊いたお米を使っている。

今回は、埼玉県(と一部東京都の多摩地域)の名物として近年知名度が上がっている、いわゆる武蔵野うどんを使った「肉汁うどん」を注文。久々に、太くて歯ごたえ十分の小麦粉の風味を味わった。


筆者が注文した埼玉名物の「肉汁うどん」(筆者撮影)
筆者が注文した埼玉名物の「肉汁うどん」(筆者撮影)

また、売店では地元産中心の野菜、埼玉県内だけでなく東北道沿線の土産物、おにぎりや弁当、肉まん、コロッケといった軽食、そして首都高のオリジナルグッズなどがぎっしり並べられていて、レジにも長い行列ができていた。


■地域の特産品をアピールする展示も

地域のPRの場として、鋳物製品や盆栽(川口市安行は、盆栽園が多いエリア)の展示もあり、特色を出す努力も垣間見られた。

アソブーンの前を抜けると、その奥に広大な芝生広場と池が目に飛び込んでくる。家族連れがくつろぐ、イイナパークの中心部分である。


広大な芝生広場と歴史自然資料館(筆者撮影)
広大な芝生広場と歴史自然資料館(筆者撮影)

一画にある歴史自然資料館は著名な建築家、伊東豊雄氏の設計で、中に入ると江戸時代、関東郡代の伊奈氏によって築かれた赤山城に関する展示などがあり、学びの場にもなっている。ちなみに伊奈氏は「イイナパーク」の名前の由来にもなっているようだ。

首都高には、三郷線の八潮PAや湾岸線の市川PAなど、大小合わせて20カ所ほどのPAがあるが、カスタムカー、チューニングカーなどが集まることで知られる神奈川5号大黒線の大黒PA以外は、規模が小さいこともあり、ほとんど注目されてこなかった。

HWOは広い敷地を必要とするため、どこでも整備できるわけではないが、首都高のPAの存在を認知させるためにも、エポックメーキングなニュースであったと感じる。

【佐滝 剛弘 : 城西国際大学教授】