フィギュアスケートの元世界女王、浅田真央選手(26=中京大)の引退表明から一夜明けた11日、出身地の愛知県では、ゆかりの人々からねぎらいの声が上がった。子どもの時からの浅田の大好物「真央ちゃんチャーハン」がある名古屋市の定食屋「互楽亭(ごらくてい)」店主の井上一夫さん(70)は、看板メニューの「現役続行」を宣言。

 浅田が子どものころから練習した名古屋市中区の名古屋スポーツセンター(通称・大須スケートリンク)。近くにある定食屋「互楽亭」は、浅田が好物のチャーハンを食べに通った店だ。突然の引退表明に店主の井上さんは「お疲れさま。ゆっくりと休んでほしい」と、しみじみと語った。

 小学5年の時から母親らと訪れるようになり、いつも笑顔で「おじさん、チャーハンください」と注文。中学生になってからは練習前に1人で来店するようになった。浅田が入ってくると、注文の前にフライパンを握った。「黙々と食べてエネルギーを蓄えているようだった」。

 約6年前にテレビ番組で浅田の好物のチャーハンと紹介され、店には全国からファンが訪れるようになった。ファンが注文に迷わないように「真央ちゃんチャーハン」と名付けた。自家製のチャーシュー、かまぼこ、ハム、卵…。先代から引き継いだ「チャーハン」に井上さんがオリジナルの味付けを加えた。

 10年2月のバンクーバー五輪で自己最高点を記録しながら、金妍児さん(韓国)に敗れた後の同年春に突然、店に現れた。食べ終わって「銀メダルは悔しい」と表情を曇らせていたのが印象に残っている。

 70歳で現役として調理場に立つ井上さんは「僕がフライパンを握れなくなるまで『真央ちゃんチャーハン』はつくり続けるよ。今度はゆっくり食事しに来てほしい」。真央ちゃんの来店を静かに待っている。【松浦隆司】