夫との不仲が、妻を“破壊女”に変えてしまった。離婚をめぐるトラブルでバイオリン製作者の元夫(62)の自宅兼工房に侵入し、バイオリン54本と弓70本を手当たり次第に破壊したとして、愛知県警中村署は25日、器物損壊と住居侵入の疑いで元妻の楽器販売業河宮碧(みどり)容疑者(34)を逮捕した。元夫が申告した被害総額は1億5900万円に上る。中村署によると、河宮容疑者は「家に入ったが、バイオリンは壊していない」と器物損壊は否認。事件当時、2人は離婚協議中で別居しており、昨年、離婚が成立した。

 逮捕容疑は元夫が出張で不在だった14年1月30日~2月19日、名古屋市中村区の元夫宅の窓ガラスを割って工房に侵入し、バイオリンと弓を壊した疑い。元夫は中国系ノルウェー人で、名古屋市内でバイオリンの製作やメンテナンスなどを手掛けていた。

 壊されたのは、元夫が収集したり製作したバイオリンで、元夫が「(世界最高峰の)ストラディバリウスではないが、イタリア製の貴重品」という5000万円相当のバイオリンも含まれていた。ほかにも500万円相当のバイオリンが1本、200万円相当が2本、フランス製の150万円相当の弓が1本あったという。出張先から帰宅した元夫が、穴が開いたり、弦が切られたバイオリン、へし折られた弓が工房に散乱しているのを見つけた。「手当たり次第に破壊されている」と、中村署に被害届を出した。

 河宮容疑者は中国籍で、事件後、日本を出国。その後、日本と中国を7回にわたって行き来していた。中村署は7月24日に日本に戻ってきたことを確認し、東京都江東区の自宅で25日、逮捕した。器物損壊、住居侵入の公訴時効は3年。事件から3年以上経過しているが、国外にいる間は時効は停止する。