“政治アイドル”として活動する元AKB48の内山奈月(22)が、22日に人生で初めて衆議院選挙に投票した。

 21日には、新宿の小池百合子氏と枝野幸男氏、秋葉原の安倍晋三首相の街頭演説をはしごした。「同じテーマでも主張やカラーが全く違っていました。特に安倍さんと枝野さんは、AKB総選挙なら前田敦子さんと大島優子さんぐらい対照的でした」。両者がそれぞれの皮肉を言い合っている場面は、支持者たちの「そうだ! そうだ!」の声も含めて、「中立な目線で見ていると、ちょっと冷静さを欠いているところもあって、士気を高めるためと分かっていても、ちょっとだけ笑ってしまう感じでした」。

 また、小池氏の演説は1週間前にも神奈川・相模大野で聴いていた。「前回のようなジョークは無くなっていました。枝野さんと安倍さんに比べて、昼間だったのもあるかもしれませんが、聴衆も少なかったです。ただ、握手に降りてくると大勢が群がって、知名度の高さは感じました」。希望の党の勢い、小池氏の危機感は、如実に表れていた。

 神奈川の内山の地元の全候補者の街頭演説も、きちんと聴いた。全員と握手も体験した。「握手だけは、思うところがありました。明らかに流しながら握手している人、手の握り方や視線から誠実さが伝わってくるような人ばかりで、残念ながらいい握手をされている人は1人もいなかったです。心がこもっていなかった? そうですね。もちろん、アイドルと政治家では違うし、1人でも多くというお気持ちがあるのは分かるのですが、どこか『応援してもらって当たり前』的な雰囲気が、出てしまっていました。握手をするからには、そこに本気を込めた方が良いと思いました」。

 内山は、テレビの歌番組などに出演できるAKB48選抜メンバーに選ばれるタイプではなかったが、それでも、自身3回目のAKB48選抜総選挙(15年)では、第39位にまでランクインした。AKB48時代は「握手会の女王」と呼ばれるほどに握手の評判が高いメンバーの1人だった。その神対応が、人気の理由だっただけに、立候補者たちの有権者への接し方には、一家言を持っていた。

 また、ある候補者が公民館で開催した個人演説会にまで足を運んだという。「私は全候補者のツイッターをフォローしていたので、そこで情報をつかんで、聴きにいきました。候補者を応援する有名な方が応援ゲストでいらっしゃって、より分かりやすく、熱く政策と候補者の方の魅力を説明されていました。ただ、聴衆はお年寄りばかりで、若い人は私だけでした。ちょっと濃すぎて、敷居が高い感じは否めませんでした」。

 初めての衆院選の投票の決め手となったものを尋ねると、「正直、今回は人柄で決めることはしませんでした。もう少し広い意味で、政党とか国の代表としてどうかという目線で判断させていただいて、投票しました」。

 選挙期間中に、たくさんの演説を聴き、ツイッターで各候補者の情報や政策を知り、「すごく勉強になりましたし、もっともっと知りたくなりました。友だちと選挙の話をした時にも、『えーっ、こうじゃない?』と、私の意見を言うようになりました。ただ、今の若い人たちは、政治を熱く語ることに、ちょっと引いちゃう人がいるのも現実で、そういう世の中の雰囲気が、今後の課題ということも分かりました」。

 内山は「どんな時も、どの政党に投票するのかを最初から決めている形って、どこか“崇拝している”部分があると思うんです。それよりも、私は、具体的な政策なども学んだ上で、常に冷静にロジカルなもので判断して、投票できるようでありたいって思いました」。

 アイドル時代は、AKB48選抜総選挙で立候補する側だった内山は、今後、有権者の1人として、条文を全てを暗記している日本国憲法だけでなく、より広い観点で政治を学んでいくと意気込んでいた。

「私は全候補者のツイッターをフォローして動向や政策を知ることができました。若者が、もっと身近に感じられるようにするのは、各政党の大きな課題だと思いました」。