「ひふみん」こと、将棋棋士の加藤一二三(ひふみ)九段(77)が、あなたのお悩み相談に答えます。

 14歳でプロになり、今年6月に引退するまで63年間、勝負の世界に身を置いてきました。敬虔(けいけん)なキリスト教徒として30歳で、洗礼も受けています。生きる厳しさと、聖書の教えをベースに、指導対局ならぬ、人生指南をしてくれます。毎週水曜日に掲載します。

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<質問>

 会社に入って35年、無趣味な仕事人間でしたが、半年前から週末帰農を始めました。田舎は農家(兄が継ぎました)だったこともあり、稲作と畑作はある程度、手伝った経験があります。子育ては完了して、2人の息子は社会人。勤めている会社は傾き始め、私は通称「追い出し部屋」のリストラ予備軍。耕作放棄地を手に入れて、本格的に農業を始めたいのです。第2の人生に踏み出すべきでしょうか?(58歳 会社員 宮城県)

<回答>

 この人が長年会社に勤め続けてきたことを、私は尊敬します。また、親としての責任を立派に果たしたと思います。お子さんが社会人となって、子育てが完了しているのですから、ご家庭としても明るいことです。

 ですが、早期退職については「ちょっと、待った」です。わざわざ、自分から辞める必要はありません。決まったお給料がもらえるのなら、しがみつきなさい。したたかにたくましく、粘ればいい。相手に「しぶといヤツ」と思わせればいいのです。

 将棋界では、65歳以上でありながら現役を続けている人がいっぱいいます。なぜなら、みんな「タイトルを獲得できる権利がある」と思っていますから。私ももちろん、「不可能はない」と思っていました。中には菜園作りを楽しみにしていた棋士もいました。ただし、時期が来て辞めてからと、あくまで「第2の人生」としての線引きしていました。

 よほどいい条件で辞めるというのなら別ですが、そうでないのなら「帰農」は楽しみに取っておいてください。仕事中とか通勤途中でも、品種を増やすとか耕作面積を広げるといった準備を着々と進めておけばよろしい。

 農耕を楽しみにしていた知人の医者がいます。「農作物だけは自分を裏切らない」とよく話していました。名作映画「風と共に去りぬ」のラストではありませんが、土地と希望がある人生、うらやましいです。

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