第1次安倍政権を窮地に陥れた「消えた年金問題」の再来か-。与野党で27日、裁量労働制をめぐる厚生労働省の不適切なデータ処理問題をめぐり、安倍晋三首相が第1次政権で苦しんだ「消えた年金問題」になぞらえる声が出始めた。厚労省には、野党だけでなく自民党からも批判が強まっており、裁量労働制を盛り込んだ首相肝いりの「働き方関連法案」の行方も、不透明になってきた。

 この日、自民党で報道陣に非公開で開かれた厚生労働部会では、厚労省に「すべてを台無しにした」などの批判が続出。「このままでは『消えた年金問題』と同じになる」と警戒感も広がった。07年の「消えた年金問題」は、年金保険料支払いのデータ記録に関し、社会保険庁のずさんな管理が表面化。国民の大きな批判を招いた。自民党は同年の参院選で敗北し、その後の安倍首相退陣につながる1つの要因となった。政権にも「トラウマ」であるのは間違いない。

 部会後、西田昌司参院議員は「安倍政権にとって命取りになりかねない」として、裁量労働制を働き方関連法案から切り離すべきとの認識を示した。法案提出の時期も、当初より遅れるとの見通しが出ている。

 一方、一貫して裁量労働制を盛り込む法案の撤回を求める野党は、国会内での合同集会で、「データ問題は、消えた年金問題と軌を一にするもの。安倍政権の対応はあの時と同じだ」(希望の党・古川元久幹事長)と、消えた年金問題を念頭に攻勢を強めた。

 裁量労働制の問題は、18年度予算案の採決をめぐる与野党の対立にも発展。与党は今日28日、予算案を委員会と衆院本会議で採決を「強行」する構えだが、野党は徹底抗戦の構え。国会はますます混乱してきた。【中山知子】