森友学園への国有地売却問題に関する決裁文書書き換え疑惑をめぐり、財務省は8日、決裁文書の「原本」のコピーを国会に提出した。開示済み文書と同じ内容で、核心である書き換えの有無も明かされず、野党は「ゼロ回答どころかマイナス回答」と猛反発。野党は審議を拒否して、国会は再び空転。自民幹部からも苦言が出た。一方、朝日新聞が報じた決裁文書とは別の決裁文書に、財務省が否定してきた「価格交渉」をうかがわせる記述があることが新たに分かった。

 財務省が原本のコピーとして国会に示したのは、「売払決議書」「貸付決議書」の紙とPDF、それぞれ2種類で計4種類の決裁文書。約500ページに及ぶ膨大な資料だった。これまで大阪地検による捜査を理由に、すべての資料を確認できないとしてきたが「現時点で提示できるのは、これがすべてだ」と訴えた。

 内容は、昨年国会議員に開示された文書と同じ。「期待を持たせておいて、このありさまだ。(調査を求めた)与党のメンツもつぶした」(立憲民主党の福山哲郎氏)形になったが、財務省は疑惑について、現在も「調査中」だとした。

 紙とPDFの一部には、体裁の違いもみられた。すでに明らかになったチェックマークの有無のほか、近畿財務局でファイルにとじられた「原本」を目にした野党議員からは、ファイルから外してコピーした際に残るはずのパンチの跡が「調書」の部分で、PDFにはあるものの、紙にはないとの疑問が示された。

 疑惑が報じられている以上、野党の関心は「この文書以外のものは存在しているか」の1点。野党のヒアリングでも再三質問が出たが、財務省は「現時点ではお答えできるものはない」と口を閉ざす一方、「ない」とは明言しなかった。

 「『捏造(ねつぞう)はない』と言わないから、国会(の審議)が止まる」(野党議員)と指摘された財務省は「昼夜を問わず精力的に調査をしている」と訴えたが、不透明な答弁が疑念を増幅させている。野党の反発で衆院本会議は流会。参院予算委員会も、欠席した一部野党の質問時間が過ぎるのをただ待つ「空回し」が続き、国会日程への影響も拡大。自民党からも「しっかり説明責任を果たしてもらわないといけない」(岸田文雄政調会長)と、財務省への苦言が出た。

 疑惑が真実なら、責任を問われかねない麻生太郎財務相。参院予算委では、過去10年、財務省の決裁文書の修正が原因で処分されたケースはないとして、理解を求めた。【中山知子】