女優の菊池桃子(49)へのストーカー行為で、3日までに、元タクシー運転手で無職の飯塚博光容疑者(56)が逮捕された。この事件を受け、ストーカー加害者の支援団体「ストーカー・リカバリーサポート」代表の守屋秀勝さん(52)は、「釈放後、菊池さんが報復を受ける可能性もある」として、加害者の更正支援の必要性を訴えた。

 菊池さんは昨秋から、自宅のインターホンを何度も鳴らされる、交際を求めるメールが執拗(しつよう)に送られるなどのストーカー行為を受けた。守屋さんは容疑者について「典型的な『ファン型』のストーカー」と分析。初犯であれば、罰金で釈放される可能性が高いとし、「この容疑者についても『逮捕されて終わり』とは思えない」と危機感を示している。

 実は、守屋さんも元ストーカー加害者。20~40代、約20年間にわたり、さまざまな女性にストーカー行為を繰り返したという。「なぜだか分からないけど、自らの意思では止められない。ストーカー加害者の心理は、薬物依存よりたちが悪いんです」。更生施設に入院したこともあったが、完治しなかった。

 救ったのは、アドラー心理学の「目的論」について書かれた本。インターネットで偶然見つけたものだった。「これを読んで、自分の行動をバカバカしく感じた。こんなことを言うのはあれだけど、もしその本に出会っていなければ、本当に人を殺してしまっていたと思うんです」と明かす。

 守屋さんは自身の力で症状を完治したが、ストーカー当事者の完全更正には、専門家の介入が不可欠だという。「加害者の感情は、いったん暴発したら自分では抑えられないんです」。 自身が苦しんでいたとき、相談する場所がなかったという経験から、2年前に団体を設立した。元大阪府警の顧問が1人いるが、基本的には仕事をしながらほぼ全ての相談に1人で対応している。電話は無料で、24時間対応だ。「自分がストーカー加害者だと自覚して、行為を止められない人もいる。今の日本に相談できる場所はほとんどない。ストーカー問題の発展途上国なんです」。

 昨年6月、警察が事前の警告なしに加害者に禁止命令を出すことを可能にした、改正ストーカー規制法が全面施行された。ただ、守屋さんは「警察庁は、この命令で8、9割がストーカー行為を止めるというが、加害者心理を甘く見ている。私は3割はなんらかの行動を続けると見ている」。

 現在は、自身を救ったアドラー心理学をベースに、加害者支援のプログラムを構築しているという。「しっかりとした治療を受ければ、100%更正できる」と意気込む。

 菊池さんが被害に遭った今回の事件は、警察が容疑者の行動を事前に察知したことで、事なきを得た。守屋さんは「ストーカーは、被害者も加害者も破滅させる大きな問題。もちろん悪いのは加害者だが、世間の認識も変わらないといけない」と語気を強めた。