ロボットと人間が100メートル競技で対決する。そんなドラえもんのような話を2020年に実現させたい-。

 東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会のテクノロジー諮問委員会は今年3月までの2年間、真面目にそんな議論を積み重ねてきた。そして28日、諮問委は組織委に提言書を提出した。

 国領二郎委員長(慶大教授)は「IoT(インターネットと物がつながり相互に制御する仕組み)とAI(人工知能)が加速度的に進化している。ただ、単に便利というのではなく、テクノロジーが暴走してしまう懸念も示されている中で、それら技術が人間になじめるというモデルケースに2020年が示せれば良い」と語った。

 提言書にはさまざまな最新技術による大会運営モデルが示された。観客の快適さをAIでサポートする技術として「ロボット・多言語翻訳」によるフレンドリーな会場案内や競技解説。「チャットボット(自動会話プログラム)」による迅速な問い合わせ応答をすることで、コールセンターなどのコストも削減できるとした。トイレや売店の待ち時間予測もAI技術で行う。

 競技自体を盛り上げる技術として、センサー技術とVR(仮想現実)、AR(拡張現実)を組み合わせて、選手の能力を可視化するものや、会場内外の興奮や応援を、インターネットを通じて共有するシステムなどが示された。

 「ロボットと人間の対決」の話は実現可能性の問題もあり、提言書の文言には盛り込まれなかったが、提言書発表会見で委員の口から、目指したいとの意欲的な発言があった。

 経営コンサルティングの梅沢高明氏(A.T.カーニー日本法人会長)は「オリンピック選手、パラリンピック選手とロボットがエキシビションで短距離走をやる。世界で誰も見たことのない光景をつくることで『人とテクノロジーの共存』という根っこにあるメッセージを世界に発信できる」と熱弁。また、世界的に市場が急成長しているeスポーツの日本における市場拡大の機会とも捉え、「オリ、パラ選手のデータを取って、インターネット上に上げれば、世界中のゲーマーがそれと対戦できる。米国、中国、韓国に市場の立ち上げという意味で遅れているが、東京大会でそのようなことができれば日本のeスポーツの良い発射台になる」と話し、「2020年大会を壮大な実験場として使わせていただけたら」と語った。

 もちろん、これら全てを組織委の大会予算で実現させることは困難だが、組織委側は「関係各所と連携して、実現できるところはさせていきたい。今から否定するものではない」と前向きに捉えた。